研究課題/領域番号 |
25660108
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 石川県立大学 |
研究代表者 |
宮脇 長人 石川県立大学, 生物資源環境学部, 教授 (80012053)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 水分活性 / 高分子水和 / 高分子内水素結合 / タンパク質安定性 / 高分子間水素結合 / ゾル・ゲル転移 |
研究概要 |
水溶液中の高分子水和状態に重要な影響を及ぼす水分活性データをこれまでに蓄積し、現在、糖類、アルコール類、適合溶質類、塩類等の約40種類の水溶液に関するデータベースを構築した。水溶液中における種々のタンパク質熱安定性(RNase A, Lysozyme, Chymotrypsinogen A)を検討した結果、低分子水溶液中におけるタンパク質安定性の自由エネルギーは、タンパク質水和とタンパク質への共存溶質結合のバランスにより決定され、全体としては水分活性がタンパク質熱安定性に重要な役割を果たすことを、理論的・実験的に明らかにしてきた。 そこで、本研究においては同様な手法を食品高分子ゾル・ゲル転移の解析に適用するものである。タンパク質熱安定性は分子内水素結合とタンパク質水和との競合過程であるとすると、高分子ゾル・ゲル転移は高分子間水素結合と高分子水和との競合過程で、前者が強い場合高分子溶液はゲル状態、後者が強い場合ゾル状態になると考えられ、このバランスに水分活性が重要な役割を果たすことが想定される。今年度はこの仮説を実験的に検証するために、スクロース、マルトース、グルコース、リボースなど種々の糖類、また、尿素、エタノールなどの低分溶質水溶液中において、低分子濃度変化により水分活性を変化させた条件において、ゼラチン、κ-カラギーナンなどの高分子水溶液のゾル・ゲル転移を、示差操作熱量分析、粘度測定、動的粘弾性測定などにより測定した。これらのデータから、高分子溶液のゾル・ゲル比率を定量化し、これに二状態モデルとしてのvan't Hoff 式を適用することによって、ゾル・ゲル比率と水分活性との相関を解析し、ゼラチンおよびκ-カラギーナンに関しては十分な成果が得られた。さらに関連研究として適合溶質中におけるタンパク質熱安定性および酵素の動的安定性についても解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.水溶液系の水分活性デ-タベ-スの充実および溶質活量、溶液構造の解析については各種糖類、アルコ-ル類、中性塩類などに加えて、各種適合溶質溶についてもの水分活性を測定し、われわれがこれまでに得た知見により、水分活性(aW )に関する2パラメーター式を用いてデータベース化してきた。また、関連研究として、適合溶質溶液中におけるタンパク質熱安定性および酵素の動的安定性について解析し成果を得た。 2.食品高分子のゾル・ゲル転移の測定については種々の溶液環境において温度を変化させて、先ず、ゼラチンのゾル・ゲル転移を測定した。測定法は、高感度示差走査熱量分析と動的粘弾性測定装置による力学物性測定を組み合わせた。これらの測定値から高分子のゾル状態([Sol])とゲル状態([Gel])の比、すなわちゾル・ゲル状態平衡Kの温度依存性をおよび水分活性依存性を算出した。 3.上記ゾル・ゲル状態平衡Kに対して、二状態モデルに基くvan’t Hoff式を適用し、ゾル・ゲル比の温度依存性を記述した。 4.ゾル・ゲル転移現象に及ぼす水分活性の影響の解析:ゾル・ゲル転移現象をゲル状態の高分子に対する水和と溶質の多点結合反応によりゲル状態に移行する反応として取り扱い、水分活性との良好な相関を得ることができた。 5.ゾル・ゲル転移制御による食品物性制御への応用については、これをゼラチン、κ-カラギーナンの各種水溶液について、溶液物性とゾル・ゲル転移挙動との関係を解析し、その結果の応用による食品物性制御の可能性について検討した。
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今後の研究の推進方策 |
1.ゼラチンに関しては、示差走査熱量分析および動的粘弾性測定以外にも、円偏光二色性分析により、ゾル・ゲル比率の定量化指標に関してより高度な解析をはかり、水分活性との相関をより正確に解析する。 2.タンパク質サブユニット相互作用の解析についてはアルコール脱水素酵素、乳酸脱水素酵素などのサブユニット酵素はサブユニット解離により酵素活性が大きく変化する。このことを利用して、種々の溶液の種々の環境条件での酵素活性測定により、サブユニット解離状態に及ぼすタンパク質水和状態の影響を解析する。 3.DNA-DNA相互作用における溶質和・水和の影響の解析については、溶液環境を変化させて、DNA相補鎖の結合定数を測定し、DNA-DNA相互作用における溶質和・水和の影響を解析する。結合平衡の測定は、温度スキャンによる吸光度を用いたメルティング測定、蛍光色素SYBR Green を用いたDNA二重鎖測定、蛍光ラベルしたDNA鎖の二重鎖形成による蛍光クエンチングに基づくFRET法、などを適用し、さらに高感度示差走査熱量分析法を併用する。この結合平衡に及ぼす溶液の水分活性の影響を解析することにより、DNA-DNA相互作用に及ぼすDNA水和状態による影響を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品類に関し、特に食品高分子材料については安価であり、またこれまでの在庫量が十分にあったために、予想よりも物品費使用額が少なかった。 今年度は実験の種類が多く、高価な試薬を多く用いるため、消耗品支出額が増加するため物品費使用額も増加するものと思われる。
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