研究課題
平成26年度(二年目)は、大気由来の窒素負荷量が異なる2つの森林(窒素負荷の小さい北海道の森林と窒素負荷の大きい愛知県の森林)を対象に植物試料の採取および硝酸の窒素・三酸素同位体分析を行い、植物の窒素同化過程の解析や同化される硝酸の供給源同定を試みた。植物試料は、マツ、ナラ、セコイア、スギといった木本類、ササといった草本類、コケ・地衣類など様々な植物種の葉、枝、幹、根、といった部位に分けて分析を行った。また、植物中の硝酸の起源と考えられる大気沈着由来の硝酸や土壌中の硝酸の窒素・三酸素同位体組成を調べるために、降水(林外雨と林内雨)および土壌試料の採取も行った。採取した植物および土壌試料は、初年度に開発した手法を用いて、直ちに硝酸等の無機窒素化合物を抽出した。抽出液および降水試料中の硝酸等無機化合物は、一酸化二窒素に化学的に変換してから硝酸等の窒素同位体組成を分析し、さらに一酸化二窒素を酸素分子に変換することによって硝酸の三酸素同位体組成を分析した。降水試料中の硝酸の三酸素同位体組成は、林外雨、林内雨共に、大きな同位体異常(+26‰程度)を持つことが確認された。また、土壌試料中の硝酸の三酸素同位体組成については、0‰では無かったことから、根から吸収する硝酸に大気由来の硝酸が最大数%入っている可能性があることが考えられた。降水由来の硝酸と土壌由来の硝酸の三酸素同位体組成は大きく異なることが確認でき、硝酸の三酸素同位体組成は、植物中の硝酸の起源を推定するのに有効な指標であることが分かった。植物中の硝酸の三酸素同位体組成は、植物の種類によって大きく異なることが分かった。ササやコケ類中の硝酸は高い三酸素同位体組成を持ち、半分近くが大気由来の硝酸であることが分かった。木本類についてもササ等に比べると少ないが、大気由来の硝酸が含まれていることが確認された。
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Biogeosciences
巻: 11 ページ: 5411-5424
10.5194/bg-11-5411-2014
大気環境学会誌
巻: 49 ページ: A63-A72
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http://biogeochem.env.nagoya-u.ac.jp/