• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2013 年度 実施状況報告書

森林エアロゾルの正体を探る-クモの巣を用いたパッシブサンプリング-

研究課題

研究課題/領域番号 25660117
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関名古屋大学

研究代表者

竹中 千里  名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (40240808)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードエアロゾル / クモの巣 / 放射性セシウム / インパクター / 生物起源 / 鉱物起源
研究概要

森林からは、植物起源のさまざまなエアロゾルが発生している。森林が放出する揮発性有機化合物(VOC)起源のエアロゾルに関しては大気化学の分野研究例が多いが、その他の起源の森林エアロゾルに関する情報は少ない。本研究では、森林に沈着した福島第一原子力発電所事故起源の放射性セシウムがエアロゾルとして再拡散している可能性が示唆されているのを受け、森林エアロゾルの性状とその発生メカニズムを明らかにすることを目的とする。その手法として、「クモの巣」に付着したエアロゾルを観察することを本研究の特徴とする。
福島県川俣町内の森林において、カスケードインパクターを用いてエアロゾルの採取を行い、そのサイズおよび形状を走査型電子顕微鏡で観察した。その結果、0.25~1マイクロメータのサイズの粒子が最も多く、生物起源の形状の粒子が多く見られた、一方、大きな粒子サイズのものには鉱物由来(土壌由来)と思われる粒子が多く認められた。粒子の数では、生物起源の粒子のものが多い傾向が認められた。
クモの巣の採取は、同じく福島県内の森林において、ジョロウグモの巣を採取した。採取方法としては、直径20cmの紙皿2枚を使い、挟み込むようにしてクモの巣の形状のまま採取した。その試料を顕微鏡を用いて観察した結果、クモの糸は、2ミクロン程度の径をもち、10~20ミクロン程度の粒子をとらえていることが明らかとなった。捕捉されている粒子には、鉱物起源と思われるものが認められなかった。
さらに観察数を増やす必要があるが、これまでの結果から、カスケードインパクターで採取できる粒子と、クモの巣で捕捉している粒子は、大きさ、起源が異なることが示唆された。生物起源の粒子のみについて放射性セシウムの飛散を評価するには、クモの巣の観察が有効であることが考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

目的としている森林内エアロゾルの形状について、おおまかな実態を把握することができ、またサンプリング方法によりとらえられるエアロゾルの種類が異なることが明らかとなった。残念ながら、採取したエアロゾルからは放射能を検出されなかったので、放射性セシウムのエアロゾルとしての存在状態に関する知見を得ることはできなかったが、これは、サンプリング地点の環境放射能がそれほど高くないことに起因しているためと考えられた。研究はおおむね順調に進んでいると判断している。

今後の研究の推進方策

放射性セシウムのエアロゾルとしての飛散形態を把握するためには、さらに放射能汚染レベルの高い地点において、サンプリングする必要がある。山木屋地区よりさらに汚染レベルの高い地点を新たなサンプリング地点とし、クモの巣およびカスケード式インパクタでクモの巣を採取する。
今年度は、当初の計画とおり、エアロゾルの生物起源と考えられるもの(花粉、胞子、樹皮、葉面ワックス)を直接サンプリングをして、エアロゾル状物質の形状比較を行う。以上の結果を解析して、森林エアロゾルの実態を明らかにすることにより、森林内での放射性セシウムの局在と安定性に関する情報と併せて、エアロゾルとしての再飛散のメカニズムについて明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

当初予定していたサンプリング地点が、大規模な除染作業のために、試料採取に適当でないと判断し、その地点でのサンプル採取が行えなかったことが理由である。
新たな試料採取候補地が見つかったため、今後は予定通りに研究を進めていく。

  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 学会発表 (1件)

  • [学会発表] ジョロウグモNephila clavataへの放射性セシウムの集積 -他元素との関係ー

    • 著者名/発表者名
      綾部慈子、金指努、肘井直樹、竹中千里
    • 学会等名
      日本森林学会
    • 発表場所
      大宮ソニックシティ

URL: 

公開日: 2015-05-28  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi