最終年度、愛知県ではクリやエゴノキに加えてコハクウンボク、トチノキ、オニグルミ、鹿児島県ではマテバシイやスダジイを対象とした。種子食昆虫の加害様式については、とくにクリにおけるゾウムシ類の食害程度を、昨年度開発に成功したCTスキャン解析法を駆使して、非破壊的により精密に定量化した。また、マテバシイにおいては、ゾウムシの脱出口が他の昆虫や菌類の加害に及ぼす影響を明らかにした。 野ネズミの生息状況を継続調査した。野ネズミの種(アカネズミ、ヒメネズミ、スミスネズミなど)、性別、体重などを記録した。屋久島においては、植生の垂直構造に着目し、低・中・高標高間で野ネズミの種構成や生態特性を比較した。また、遺伝子に基づく親子判定を進展させ、野ネズミの密度や行動圏の変化を、皆伐を含む森林施業の影響を考慮して洞察した。 種子の供試実験にも、引き続き取り組んだ。とくに、非破壊的に定量化した種子を用いることによって、野ネズミが内部状態を的確に認識していることを実証した。そして、昨年度に定めた推進方策に従い、一部のクリで揮発性物質を検出し、認識トリガーとしての可能性を示唆した。また、餌台への配置パターンも重要であることを見出した。クリ・トチノキ・オニグルミ、エゴノキ・コハクウンボクの選択実験も行い、その結果をもたらす要因を検討した。種子の持ち去り先、餌台からの距離、埋められた土壌の深さなども追試し、調査地の環境特性も比較しながら、貯食・分散様式を考察した。 成果を学会で発表した。その中の1件で受賞した。
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