研究課題/領域番号 |
25660120
|
研究機関 | 独立行政法人水産総合研究センター |
研究代表者 |
冨樫 博幸 独立行政法人水産総合研究センター, その他部局等, 研究員 (80616110)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 炭素・窒素安定同位体比 / アミノ酸の窒素安定同位体比 / 河川生態系 / 水生昆虫 / 森林 |
研究実績の概要 |
本研究は、京都大学フィールド科学教育研究センター和歌山研究林、及びその周辺の集水域を対象に、集水域単位の皆伐施業という特殊な施業法の利点を活用し、森林施業が河川生態系へ及ぼす長期的影響を、水生昆虫の群集構造、炭素・窒素安定同位体比、及びアミノ酸の窒素安定同位体比から解明することを目的としている。 H26年度は、野外採集された水生昆虫とその餌資源の安定同位体比分析を精力的に進めた。まず、水生昆虫の群集構造について、本調査地に生息していた水生昆虫は、6目20科9属の計35分類であった。最も多様性が高かったのは伐採後5年の渓流で、12、23年と多様性は低下した。その後、多様性は上昇し、49年以降大きな変化は見られなかった。炭素・窒素安定同位体比分析により、森林伐採からの時間軸に応じて水生昆虫のδ13Cは減少していた。このことは、水生昆虫の生産依存性が、森林の成熟に応じて水域(付着藻類)から陸域(落葉)へシフトしていることを意味していた。しかし、δ13Cの減少は、川底へ届く光環境の変化によって一次生産者のδ13Cが低下していた可能性も考えられる。ところが、高齢林における付着藻類と落葉のδ13Cは重複していたため、時間軸に応じたδ13Cの減少は、水生昆虫の餌資源のシフトなのか光環境の変化なのかは区別できなかった。次に、アミノ酸の窒素安定同位体比を測定したところ、各地点で採集された付着藻類のフェニルアラニンのδ15Nは-5~5 ‰、落葉は5~11 ‰と重複しなかったことから、アミノ酸の窒素安定同位体比を測定することで、時間軸に応じた生産依存性の変化を明らかにすることができると考えられた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、おおむね順調に進展している。 水生昆虫の群集構造の解明、炭素・窒素安定同位体比、及びアミノ酸の窒素安定同位体比の測定も進んでおり、着実にデータの収集が出来ている。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画の大きな変更はない。前年度までの結果を基に、一部補完調査を実施するかどうかを判断する。また、次年度は最終年度であるので、得られた成果をまとめ、国際誌に投稿する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
炭素・窒素安定同位体比、及びアミノ酸の窒素安定同位体比の分析を効率的に進めたことにより、当初の予定より少額で研究が進行している。決して少額であったことで研究成果が乏しいわけではない。
|
次年度使用額の使用計画 |
炭素・窒素安定同位体比、及びアミノ酸の窒素安定同位体比の分析数を確保するため、残金は消耗品の購入に使用する。また、成果が蓄積されてきたので、論文の英文校閲、及び論文掲載料に使用する。
|