本研究は、森林伐採が河川生態系へ及ぼす長期的影響を水生昆虫の各種同位体から解明した。炭素安定同位体より、水生昆虫は森林の若齢期では水域(付着藻類)に、成熟林では陸域(落葉)資源に依存していた。アミノ酸窒素安定同位体からは、各分類群の水域と陸域の依存度や栄養段階を推定した。また、付着藻類及び刈取食者に含まれる放射性炭素14は、現代の二酸化炭素よりも低かった。これは、岩石中に含まれる古い炭素が地下水等に溶け込み、生態系に利用されていることを意味していた。森林施業が河川生態系へ及ぼす影響は、河川水の栄養塩などは比較的早く回復するものの、食物網構造など生態系の回復は50年以上必要であることが分かった。
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