研究課題/領域番号 |
25660123
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
黒田 慶子 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (20353675)
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研究分担者 |
庄司 浩一 神戸大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (10263394)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 樹液流速 / 木部樹液 / 熱流束計 / グラニエ法 / 樹木医 / 診断 |
研究概要 |
熱流束センサーは樹幹の曲面への装着に適した小型タイプ(縦横1x1cm)を選択した。針葉樹(アカマツ、ヒマラヤスギなど)と広葉樹(コナラ,アベマキなど)の健全木を供試木とし、外樹皮を少し剥いで両面テープでセンサーを装着した。検出した値(電圧差)をロガーに蓄積し、1ヶ月~4ヶ月程度連続測定を行った。一部の個体には既存の樹液流速測定手法である熱拡散法(グラニエ法)を同時に適用し、両者の値を比較した。 蒸散が活発な日照時には、熱流束の値は外気から樹幹内方への動きを示した。根から低温の水が吸い上げられて木部樹液流として枝へと動き、そのために樹幹内が外気より低温になっていることを示す。一方、蒸散が停止する夜間には逆方向の熱の移動が認められた。つまり、昼間に暖まった樹幹辺材から気温が低下した外気方向に熱が移動することが確認された。この熱流束の値の変動傾向は、樹幹表面と樹幹木部(辺材)に装着した温度計の値の差とも一致していた。針葉樹供試木では、熱流束の値の変動は、既存の測定法であるグラニエ法による測定値と極めて高い相関を示した。従って、日照時の樹液流速の変動に関しては、熱流束センサーによる測定の信頼度は高いものと判断された。グラニエ法では、樹幹の1点を加熱してその熱の拡散傾向から樹液流速を測る。この手法と比べると、非破壊的で小型の熱流束センサーによる測定は利点が多い。樹液流の活発さは樹木の衰弱傾向と関係が深いことが知られており、装着や計測が容易である熱流束センサーは、樹木医の街路樹診断や果樹園での利用に適していると考えられる。広葉樹でも、熱流束の値の変動は針葉樹と同様に認められたが、樹種や個体によって変動幅や変動の傾向に差違が認められた。通導組織のである道管のサイズや分布特性によって測定値差違が出現する可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は測定を試行し、手法について検討する予定であったが、針葉樹と広葉樹、各数種で連続的に計測した結果を検討することができた。既存の測定法である熱拡散法(グラニエ法)による測定も本年度から一部の個体で実施することができた。計画時には苗木を供試木とする予定であったが、グラニエ法では付傷による影響が予想されたため、直径10cm以上の成木を用いる実験とした。熱流束センサーの値はグラニエ法との相関が極めて高いことがわかり、まず針葉樹については信頼度の高い結果が得られた。このような成果が得られたので、研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
初年度の実験では、少数の計測機器を一定期間ずつ様々な樹種に設置して計測を行った。また、グラニエ法の機器は離れた位置に点在する供試木には設置できないという制約から、すべての供試木で両測定法の比較が難しかった。しかし熱流束センサーの有用性が明確になったので、今後の研究では計測機器を買い足して、測定樹種と個体数を増やし、測定期間を長くする予定である。また、簡便な樹液流測定装置としてロガーと組み合わせ、樹木医の街路樹診断にも利用できるように検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
計測用のセンサーとロガーの購入数を計画時よりもやや減らしたため、次年度使用額が生じた。 この金額は、センサーとロガーの買い増しに使用する予定である。
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