研究実績の概要 |
本年度は、野外に生育する成木アカマツ、クロマツ及びヤクタネゴヨウの栄養組織外植体に由来するカルスや苗条原基からの個体再生を目指した。また、通常の細胞から細胞壁を取り除いた状態にあるプロトプラストの培養は、細胞に対して大きなストレスがかかる。そのため、器官分化や不定胚形成などを引き起こす効果が通常の組織培養に比べて高まることを期待し、誘導したカルスについて、プロトプラスト培養が可能であるかを検討した。 その結果、クロマツの茎頂切片を、サイトカイニンの6-ベンジルアミノプリン(BAP)を添加したMurashige-Skoog(MS)培地やWoody Plant Medium (WPM)培地で培養すると、多芽体の誘導が可能であることを明らかにした。得られた多芽体を分割して、誘導用培地と同様な組成を持つ新鮮培地で培養することによって、定期的に多芽体の増殖が可能であることが確認できた。また、多芽体を伸長させるためには、活性炭を添加した植物ホルモンフリーの培地で培養することが有効的であった。伸長させた多芽体を発根させるため、インドール酢酸(IBA)や1-ナフタレン酢酸(NAA)を添加した培地で培養した。さらにヤクタネゴヨウについては、針葉から約1cmの切片を作成し、WPM、硝酸アンモニウムを1/2濃度に希釈したMS、1/2EMの3つの基本培地に、オーキシンとして2,4-Dを加え、サイトカイニンとしてBAPまたはZeatinを添加した寒天培地で培養した。その結果、針葉の切断面にカルスが生じ、継代培養により増殖可能であることがわかった。 また、細胞培養系を基盤とする増殖法の開発を進めるため、ヤクタネゴヨウの芽と、針葉から生じたカルスについてプロトプラストの単離条件を検討し、コロニーを形成させることに成功した。
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