バイオマスはカーボンニュートラルな資源として注目されているものの、その中心は食料ともなり得る“糖”であり、非食料であるフェノール性成分の利活用が望まれている。本研究では、バイオマスを有効に活用するため、これまで、有効に活用されてこなかったフェノール性化合物の活用について検討した。今年度は、イネ科植物に含まれているフェルラ酸に着目し、これを重合することで、機能性ポリマーを創製することとした。重合方法は、化学的、酵素的、電気化学的手法などが挙げられるが、薄膜を容易に作成できる電気化学的重合(電解重合)を試みた。電解液に水酸化ナトリウム水溶液とメタノール/ジクロロメタン(1/4)混合溶媒(電解支持として0.2M過塩素酸リチウム添加)を用いたところ、水酸化ナトリウム系では電極上に薄膜が形成されなかったものの、有機溶媒系では薄膜が形成された。化学分析からこの薄膜はカルボキシル基を多く持つことが分かった。参照として酵素的脱水素重合によりフェルラ酸から重合物を合成し、電界重合から調製した薄膜と核磁気共鳴スペクトルにより比較したところ、薄膜は縮合型構造が多いことが分かった。このことより、薄膜はフェルラ酸の側鎖構造がより多く維持されており、そのためカルボキシル基が多く残存しているものと推察された。今回調製した薄膜はカルボキシル基を多く持つことから、イオン交換膜やアクチュエーターに用いることが可能と思われる。
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