研究課題/領域番号 |
25660135
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
土川 覚 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (30227417)
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研究分担者 |
稲垣 哲也 名古屋大学, 生命農学研究科, 助教 (70612878)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | テラヘルツ / バイオマス / 分析科学 / 林学 / 含水率 / 密度 |
研究概要 |
木材の乾燥下における水分移動の実態を、電子遷移レベル(近近赤外域)、分子振動レベル(近赤外~赤外域)、および分子回転レベル(テラヘルツ域)の広帯域マルチ分光計測で統合的に把握するという新奇計測アプローチを提案し、乾燥現象の樹種・樹幹部位依存性を微視的~巨視的オーダで明らかにすることを目的として、実験を行った。 カナダノーザンブリティッシュコロンビア大学において、自然乾燥下にある木材のテラヘルツ時間領域分光計測を行った。偏光させたフェムト秒レベルの極々短時間パルスを木材に照射し、試料繊維走行と偏光方向間の角度を変更して、各回転角度におけるスペクトル測定を行うとともに、空気中を透過したパルス波(リファレンス)および木材透過パルス波をフーリエ変換し、0.1THz~1THz間の複素屈折率を求めた。これにより、含水率と密度の同時計測を試みた。アスペン、カバノキ、ベイマツおよびベイツガの含水率・全乾密度ともにテラヘルツ領域の誘電率実数部と高い正の相関関係が認められ、同時計測の可能性が示された。 また、物質にピコ秒近赤外パルスレーザを照射し、その強度変化と光伝播の時間変化から試料の内部情報を検出する飛行時間近赤外分光法による木材の含水率予測および木材中の自由水・結合水比率の推定を目指し基礎的検討を行った。時間プロフィルから試料の散乱係数および吸収係数を算出し、自由水および結合水の比率の予測可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初、カナダノーザンブリティッシュコロンビア大学でのテラヘルツ計測は平成26年度から実施の予定であったが、予定を1年繰り上げて平成25年度から実施した。その結果、自然乾燥下にある木材のテラヘルツ時間領域分光計測実験をゆとりを持って実施することが可能となり、含水率と密度の同時推定計測の可能性が見出された。 また、自然乾燥下にある木材試料に波長830nm(近近赤外領域)のピコ秒時間幅のパルスレーザ光を照射し、透過パルス光の時間プロフィルをストリークカメラにより検出する飛行時間近赤外分光計測実験を当初の予定通り実施することができ、これにより、時間プロフィルの面積強度や重心の含水率変化による変動傾向や、細胞壁と空気の屈折率の違いがこれらパラーメタに及ぼす影響を詳細に把握することができ、材料の正確な散乱係数および吸光係数の算出が可能となった。これらの結果に基づいて、材内の水分分布状況をシミュレーションする端緒を得ることができた。 以上より、当該課題はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
まず、前年度に求めた吸収係数および散乱係数算出アルゴリズムを活用して、乾燥とともに変化するこれらの係数を求め、モンテカルロシミュレーションアルゴリズムに組み入れてピコ秒時間幅のパルス形状を再現する。これと各測定部位の実測パルス形状を比較することで、木材内部の光の伝搬状況を解析し、材内の自由水分布状況を把握することを試みる。 また、引き続きカナダノーザンブリティッシュコロンビア大学において、自然乾燥下にある木材のテラヘルツ時間領域分光計測を行う。偏光させたフェムト秒レベルの極々短時間パルスを木材に照射し、試料繊維走行と偏光方向間の角度を変更して、各回転角度におけるスペクトル測定を行う。複素屈折率を複素誘電率に変換し、誘電率実数部と誘電率虚数部の周波数特性にダブル-デバイモデルをフィッティングする。本研究では、木材乾燥に伴って変化する両者の値から水分子の木材への結合状況を推定する。 自然乾燥下にある木材の近赤外拡散反射スペクトルおよび赤外ATRスペクトルを所定の時間間隔で測定する。いずれも、定法に基づいた計測である。測定後、NIR/NIR、NIR/IR、IR/IRの2次元相関解析を行い、自己相関ピークおよび交差相関ピークの変動から、木材中の自由水/結合水の水素結合ネットワーク状況を解析する。
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