研究課題
前年度に行ったEGに加え、CBH系の糖質分解酵素で標準化したセルロースを糖化した。その分解残渣をGPCで分子量測定したところ、EGと比べて非常に大きな重合度を示した。興味深いことに、一部エンド活性を示すと提唱されているCBH IIの重合度変化はCBH Iのそれと大きな違いはなかった。この結果は本法がエンド活性を評価するだけでなく分解様式の識別にも適用できることが示された。GPCによる分子量測定はセルロースを誘導体化させる際に必要となる有害な有機溶媒の使用に加え、測定全体にかかる時間と労力を要するため分光分析法を用いたハイスループット解析の開発を検討した。前年度と今年度に得られた重合度データと同じ分解残渣から取得したスペクトルデータを多変量解析し、検量モデルの構築を目指した。まず、ラマンスペクトルを用いてモデルの構築を試みたが、その予測精度は非常に低かった。これは、同じ試料から測定したスペクトルの変動の方が試料間の変動よりも大きかったことが原因であると考えられる。一方、近赤外スペクトルからは比較的確度の良いモデルが得られた。検量精度を向上させるためにスペクトル前処理、領域の最適化を行ったところ、7300-4000cm-1の二次微分スペクトルが最も良い予測精度を示した。これにより、実バイオマス由来のセルロースIに対するエンドグルカナーゼ活性を迅速且つ正確に評価できることが示された。近赤外スペクトルによるセルロース重合度の予測は今回が初めての成果であるため、その理由を検証する目的から検量モデルの回帰係数を解析した。すると、セルロースのアモルファス領域と帰属される近赤外吸収量と重合度が相関することが示唆された。つまり、分子鎖が乱れたセルロースをエンドグルカナーゼが分解した結果、結晶性が相対的に上昇し、近赤外スペクトルに反映されたことが理由であると考察した。
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