研究実績の概要 |
(1)ダブルノックアウト変異体の作製と解析 シングルノックアウト変異体(atprx2、atprx25、atprx71)をそれぞれ交配させ、最終的に3種のダブルノックアウト変異体ホモ系統(atprx2/atprx25, atprx2/atprx71, atprx25/atprx71)を確立した。野生型、シングル(3種)およびダブルノックアウト変異体(3種)を6週齢まで培養し、主茎長、根の長さ、側芽本数、側芽最大長、主茎乾燥重量、リグニン量、β-O-4結合型モノマー量を測定した。その結果、各変異体の主茎長などに差はなかったが、主茎乾燥重量の減少と、主茎における細胞壁量の減少が認められた。リグニン量は全ての変異体で減少しており、atprx2/atprx25において最も減少(25%減少)した。また、すべてのダブルノックアウト変異体においてリグニン当たりのβ-O-4結合型モノマー収率が約2倍に増加した。これは易分解性の構造が大幅に増加したことを示している。さらに、ダブルノックアウト変異体のセルラーゼによる消化効率(重量減少率)およびグルコース放出量はともに1.5倍となった。以上の結果から、リグニン生合成に関わるペルオキシダーゼを同時にノックアウトすることにより、リグニンをより減少させ、さらに易分解性リグニンの割合を増加させることができることが明らかとなった。 (2)ポプラ形質転換体の作成と解析 CWPO-C抑制体ポプラ(RNAi、アンチセンス)については抑制体候補が複数固体得られているものの成長が極めて悪く、解析に至っていない。一方、シロイヌナズナを用いたCWPO-Cプロモーター解析の結果、CWPO-Cは分化や成長の活発な組織で高発現していた。このことから、CWPO-Cは植物組織の分化や生長に極めて重要な役割を持っていることが推測された。
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