一般に,河口域は塩分の劇的な変化に伴う環境圧があるため、市絵物の生息には不適だが、河口域の中でも干潟に着目すると、極めて多様な生物が認められる。その理由はなにか?我々は、干潟の地中の間隙水塩分は安定化していて、それに無脊椎動物の生息孔が干寄与し、その結果として,狭塩性の生物を含む多様な生物種に生息環境を提供しているという仮説を立て、それを調査した。 塩分ロガーを使った現地塩分長期観測結果からは、干潟の地中の塩分が30PSU程度で安定するのに対し、澪筋部の環境水は大きく変動した。この結果は、河口域の中で干潟の地中のみ、塩分が安定することを示していた。複数の河川で同様の調査を実施しても、塩分の安定化が確認された。無脊椎動物の巣穴にチューブを突き刺し、ポンプで吸い上げて、塩分を測定したところ、環境水よりも高い塩分を示したものの、地中の塩分と同等かそれより低い値を示した。この結果は、無脊椎動物の巣穴が塩分の安定化に寄与するのではなく、干潟の地中そのものに塩分安定化作用があることを推定させた。我々は、底質、地盤高などの物理基盤を測定し、塩分安定化との関連性を解析した。その結果、底質の粒径が細かく、地盤高が低い場所ほど、塩分が安定化することを突き止めた。
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