研究課題/領域番号 |
25660155
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
遠藤 英明 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (50242326)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | バイオセンサ / 魚類 / ストレス / グルコース / 魚類行動 / 魚類生理 / モニタリング |
研究概要 |
本研究は,申請者がこれまでに開発した「魚類のための生体内留置型バイオセンサシステム」を利用して,魚を自由に遊泳させた状態で体内のストレス指標をリアルタイムモニタリングするという全く新しいアプローチ法により,ストレスとされる行為が魚体に及ぼす影響を解析することを目的とした. 本年度は,まず上記目的に適合した魚類のためのグルコース測定用バイオセンサを製作した.作用極に白金イリジウム線,対極に銀塩化銀を用いて生体挿入型小型電極を作製し,作用極上にグルコースオキシダーゼを固定化し,さらに生体機能性ポリマーをその上に被覆することによりバイオセンサを製作した. 次に,このセンサを魚体内に挿入し,魚(ティラピア,200~250g)を自由に遊泳させた状態で魚体に環境ストレスを負荷し,これに伴うストレス応答をリアルタイムにモニタリングした.環境ストレスとしては,生化学的ストレス因子として溶存酸素量,pHおよび溶存アンモニア濃度の変化に伴う魚のストレス応答を測定した.その結果, 上記ストレス因子に対して,ストレスを負荷後間もなく魚体内のグルコースレベルの増加が観察された.また,負荷を継続すると時間の経過とともにグルコースレベルが減少する傾向が認められた. 以上のようにバイオセンサを用いることにより,魚に対する生化学的なストレスを負荷した際の「真のストレス応答」の測定が実現でき,魚の気持ちを知るための手がかりを探求することができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では,魚に対する環境変化や外敵・漁具といった威嚇刺激による要因を始め,物理的,生化学的なストレスを負荷し,これに伴う「真のストレス応答」を血液中のグルコース等のパラメータをストレス指標としてバイオセンサによりリアルタイムにモニタリングする.そしてモニタリング結果と各種ストレス因子,それに伴う行動学的および生理学的変化との相関を総合的に解析することにより,「魚のきもち」を知るための可能性について探求することを目標としている. 本年度の研究においては,バイオセンサの製作過程で機能性ポリマーを利用することにより,魚体内の夾雑物質の影響を受けにくい新規グルコース測定用バイオセンサを構築することができた.また,このセンサを用いて実際の生化学的ストレスの負荷時における魚の「真のストレス応答」をモニタリングすることにより,各種ストレスが魚体に及ぼす影響についての新しい検討を行うことができた.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,試験魚に行動生理的ストレス因子を負荷し,その行動を観察すると共に,バイオセンサによる測定値とストレス応答との相関関係を検討する.ティラピアは雄魚ではテレトリー意識が強く激しく争うことが知られているが,本研究ではこの習性を利用して以下に示すような実験を計画している. まず, 1尾の中型個体のティラピアにセンサを装着し,水槽内を自由に遊泳させる.そしてセンサの出力電流値が安定したところで,この個体よりも小型のティラピアを同じ水槽に入れて混泳させ,両者の行動を観察すると共にセンサの出力からストレス応答を解析する.その後,小型個体を取り出し,センサの出力が安定したところで,大型の個体を投入して混泳させ,同様に観察すると共にストレス応答を測定する.一方,これと同一の実験で両者の間に仕切り板を設け,物理的接触が無い状態でのストレス応答を測定する. これにより,前者は争いの時に生じる物理的接触と行動生理的なストレスの両方による応答結果が,後者においては主に行動生理的ストレスによる応答結果が得られると推察され,両者の結果から物理的要因と行動生理的要因のストレス応答の差異を明らかにする. 以上の実験計画より,各種ストレス因子とそれに伴う行動学的および生理学的な変化との関係を考察することにより,「魚のきもち」を知るための可能性について検討する.
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に使用予定であった実験に関わる消耗品類,設備品の一部を,既存の現有品を用いることにより研究が遂行でき,予定よりもやや少ない支出になったため. 前年度作製したバイオセンサの他に,新たなセンサシステムを製作する予定があるため,それに必要な電子回路部品類,酵素,抗体等の生化学試薬類,ガラス器具類等を購入する経費として使用する. また旅費については,ある程度の研究成果が得られたので,2014年5月にオーストラリア・メルボルン市内で開催される国際会議”Biosensors 2014”において発表予定があり,その経費として執行する.
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