研究課題/領域番号 |
25660166
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研究機関 | 東京海洋大学 |
研究代表者 |
吉崎 悟朗 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (70281003)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ヒメマス / ニジマス / 配偶子生産 / 産卵回数 / 種苗生産 |
研究実績の概要 |
多くのタイヘイヨウサケ属魚類は一回繁殖型であり、生涯のうち一度しか繁殖を行うことができず、繁殖後すべての個体が斃死する。そのため、一回繁殖型サケの種苗生産においては、親魚の再利用が不可能である。さらに、全年級群の親魚を養成することが必須となるうえ、ある年級群の親魚を感染症等で損失してしまった場合、種苗を得られない年ができてしまう。そこで、本研究では、代理親魚技法を用いて多回繁殖型サケに一回繁殖型サケの配偶子を複数年にわたり生産させる技術を確立することを目的とした。 一回繁殖型であるヒメマスをドナーとして用い、多回繁殖型であるニジマスを宿主として用いた。ニジマス宿主は、三倍体化処理により不妊化した宿主、または、生殖細胞の生存に必須な遺伝子であるdead end遺伝子の翻訳を、アンチセンス法により阻害することにより生殖細胞を除去した宿主を用いた。移殖魚が機能的な配偶子を生産できるかどうか調べるため、成熟年齢に達するまで飼育し、得られた配偶子をヒメマス配偶子と交配した。 ヒメマス精原細胞を移殖した三倍体宿主では、移殖魚23尾中1尾がヒメマス精子を排精したが、受精能がなく稚魚を得ることができなかった。また、ヒメマス卵を2年にわたって排卵した個体がいたものの、その割合は23尾中1尾と非常に低かった。そこで、生殖細胞除去ニジマスを宿主として用いたところ、移殖魚23尾中5尾が機能的なヒメマス精子のみを排精した。また、23尾中2尾が機能的なヒメマス卵も排卵した。以上の結果より、ニジマスを宿主とした場合、三倍体より生殖細胞除去個体を用いた方が効率的にヒメマス配偶子を生産可能であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ヒメマス配偶子をニジマスを代理親として複数回生産させることに成功した。効率面で課題が残されたが、この点は宿主の生殖細胞をアンチセンス法で除去することで解決した。 これらの宿主を継続飼育することで当初の計画は達成できるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度に作出したdnd遺伝子をノックダウンすることで内在性の生殖細胞を欠損させたニジマスを利用することで、今後はヒメマス配偶子が効率よく複数回作出可能かを検討していく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
上述のように三倍体宿主のニジマスの成熟率が低かったため、次世代解析用の試薬の消費が予定より少なかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度に成熟を確認したdndのノックダウン個体の交配実験を27年度に予定しており、これにより得られた次世代のDNA解析に使用する。
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