研究課題/領域番号 |
25660170
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
竹村 明洋 琉球大学, 理学部, 教授 (40222103)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 蓄光シート / 光周期 / 光受容 / 省エネ / 成長 |
研究概要 |
ルミノーバは暗闇で緑色光を長時間発光する特徴を持つ蓄光性夜光顔料である。本研究の目的は、ルミノーバを従来の人工光源の代わりに利用し、魚類の成長を促進する新たな方法の開発に挑戦することである。熱帯・亜熱帯浅海域を生息中心にもつゴマアイゴとヤイトハタを実験材料として用い、平成25年度には、研究全般の基盤となる分子生物学的な研究を進めるとともに、ゴマアイゴ稚魚を用いてルミノーバ光の広域照射実験を開始した。 1)分子生物学的研究 成長関連遺伝子(Insulin-like growth factor: IGF-1)と時計遺伝子(Cryptochrome; Cry1, Cry2, Cry3)のクローニングを行い、それらの特性を明らかにした。また、クローニングを終了した遺伝子の発現解析をRT-PCRで行い、IGF-I遺伝子(ゴマアイゴ)の発現は肝臓で高いことが再確認された。一方、ヤイトハタのCry遺伝子(MgCry1とMgCry2)の発現は調べた全組織で確認でき、中枢組織における発現量は末梢組織のそれよりも有意に高かった。細分した中枢組織で各遺伝子の発現量を比較した結果、全ての部分で高い発現がみられたが、小脳における発現量が他の部分よりも高かった。また、小脳及び間脳域におけるMgCry1とMgCry2遺伝子の発現は24:00より12:00で高かった。 2)広域照射実験 ゴマアイゴの当歳魚と1歳魚を、ルミノーバを含んだシート(対照群はルミノーバを含まないシート)で被った水槽で2ヶ月間飼育し、経時的に体重と体長を測定した。その結果、実験群(当歳魚)の体重と体長は対象魚のそれらよりも有意に大きくなった。一方、1歳魚には差は認められなかった。ルミノーバシートは日没後も緑色光を発光し続けるため、ゴマアイゴ幼魚は日没後にルミノーバから得られる光を長日と認識し、体成長が促進されたと考えられる。また、この効果は若齢魚ほど高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた分子生物学的研究と広域照射実験を行うことができた。本研究をヤイトハタで行う場合には沖縄県栽培漁業センターからサンプルの分与を受ける必要があったため、研究に先立ち本学理学部と同センターとの共同研究の覚書を交わした。これにより、平成25年度後半からのサンプルの分与が可能となり、ゴマアイゴで行ったのと同様の広域照射実験が可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
当初、分子生物学的研究で光受容体遺伝子のクローニングや発現解析を予定していた。しかし、沖縄のサンゴ礁の普通種であるルリスズメダイで行った先行研究で、光受容体遺伝子は発現量に明暗差が認められない可能性があった。この結果を受けて、分子生物学的研究には光誘導性の時計遺伝子を検討課題に加えた。今後も時計遺伝子に着目しつつ研究を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
沖縄県栽培漁業センターと琉球大学理学部との間で共同研究の覚書を交わした関係上、ヤイトハタの実験開始が平成25年度後半にずれ込んだ。本来であれば、ヤイトハタの予備実験も平成25年度前半に開始する予定であったが、これが同年後半にずれ込んだことにより、予算の執行にずれが生じた。 ヤイトハタの種苗が入手可能になった段階で、平成25年度に予定していた予備実験を即座に終了する予定である。これによってヤイトハタに使用する予定の予算を計画通り執行する。
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