サンゴのストレス耐性は個体により著しく異なるのではないかという仮説のもと、ストレスに耐性がある個体と敏感な個体を複数選別し、そのゲノム上の一塩基多型(SNP: Single Nucleotide Polymorphism)を比較することで、ストレス耐性に関わる遺伝子やゲノム領域の特定を目指している。ミドリイシサンゴは沖縄地方に普通に生息し、全ゲノムが解読されているサンゴである。そのゲノムデータを利用することで、ゲノム上に存在する多数のSNPを特定・解析することが可能である。 これまでに、次世代シークエンサーから生み出される膨大なDNAシークエンス情報からのSNPの特定、そして膨大な量のSNP情報から、高品質で信頼性が高いSNPデータを選抜する解析手法を確立し、パイプライン化した。この手法を応用して実際にミドリイシサンゴからSNPを検出し、その成果の一部を学術論文として報告することができた。 さらに漁業者から情報提供のあった、ストレスに強いサンゴ(ウスエダミドリイシ)について解析を行った。実際の観察と飼育実績の情報から、通常のストレス耐性を示す4個体と、ストレスに強い個体を選抜した。それぞれからゲノムDNAを抽出、次世代シークエンサーでDNAを解読し、SNPを特定した。それぞれの個体から約3-400万ヶ所のSNP情報が得られた。ストレスに強い個体のみに確認されたSNPは、約35万箇所であった。そのうち、表現形に大きな影響を与えると考えられる、遺伝子領域の終止コドンの生成やアミノ酸の置換を引き起こすSNP、約1600個の特定に成功した。これらがストレス耐性に関わっているSNPの候補だと考えている。
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