研究概要 |
メチル水銀は中枢神経毒性を示す有毒化学物質である。本研究では細胞内に取り込まれたメチル水銀が分泌膜小胞(エキソソーム)を介して体外に排出される分子機構を解明する。まず,飼育水中に排出されるエキソソームの特性を解析した。 飼育水中に放出されたエキソソームは,飼育水の超遠心(100,000 X g,2時間)によって分離した。分離されたエキソソーム分画には水銀と共に,エキソソーム特異的タンパク質および酵素活性が検出され,メチル水銀の濃度依存的にエキソソームの排出が活性化された。これらの結果から,飼育水からのエキソソーム分離法が確立された。蛍光ラベルされたエキソソームを血中に注入すると,ゼブラフィッシュ胚の卵黄嚢に局在したことから,血中のエキソソームは卵黄嚢から体外に排出されることが示唆された。エキソソームに含まれるCDC48,HSC70, MAP1LC3B, Rab5, SMase I,OCTN1, habp2, GAPDHタンパク質は,メチル水銀投与によって増加し,それらのタンパク質のノックダウンによってメチル水銀に対する感受性が亢進したことから,これらのタンパク質がメチル水銀の排出作用に関与することが考えられた。セレン化合物によってメチル水銀の排出が促進されることから,水銀との複合体を検出するためにセブラフィッシュを用いた長期飼育試験を行い,筋肉および肝臓をICP-MSで分析した。 以上の結果から,メチル水銀の刺激によって誘導されるエキソソーム分泌顆粒の大量精製法を確立し,エキソソームに含まれる一部のタンパク質の同定および排出への関与を明らかにした。
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