研究課題/領域番号 |
25660176
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
櫻井 清一 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (60334174)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 経営・経済農学 / 農林水産業支援組織 |
研究概要 |
平成25年度(初年度)は,やや多め(100~200名を想定)の対象者に対する質問紙形式の郵送調査の設計と,少数のすぐれた独立型コーディネーターを対象にしたインタビュー調査の準備のため,以下の3点に取り組んだ。 1)質問紙調査の設計を行った。文部科学省科学技術政策研究所が実施した先行調査の内容を再検討し,コーディネーターの経歴・出自,農業に関する知識・経験,地域社会との関わり方を特に重視した調査フォーマットを作成した。ただし,対象とするコーディネーターの限定に時間を要したため,サンプリングと質問紙の郵送は次年度に行うことになった。 2)産学連携の研究会に参加するコーディネーターおよびコーディネーターが申請する資格の審査会,奈良県におけるカキの利活用をめぐるプロジェクトなどの場を活用し,独立型コーディネーターの出自・現時点での活動内容,能力形成の概要に関する簡易なインタビュー調査を行った。コーディネーター間に形成されている自生的な人間関係・ネットワークの重要性,業務にて活用・依存している公的事業の短期性,栽培ないし食品製造に関する技術・ノウハウの重要性,自分にないノウハウについて専門家の支援を仰ぐことの重要性などが明らかになった。これらの知見は上記の質問紙作成にも反映された。 3)独立型コーディネーターと地域社会との関わり方を把握する一助として,新規農業参入経営体がどのようなコーディネーターと接触しながら農業に参入し,地域社会に定着しているかを考察した。都道府県に配属されている就農支援員が経済的障壁については様々なサポートを行っているが,社会的障壁については参入者も支援員も事後的に障壁を認識することが多く,具体的なサポートも難しいという問題点が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
質問紙調査の実施が遅れている。反面,インタビュー方式によるコーディネーターへの定性的調査が,想定以上に進展した。また結果的にインタビューを先行して行ったことにより,質問紙の調査内容の精査ができ,より対象者に負担をかけない形に変更することができた。加えて,新規就農予定経営体を対象とした分析を行うことにより,コーディネーターおよびコーディネートを依頼する農業経営体が抱える社会的要因(当該者のライフステージ,対象地域における社会資本の付置状況など)を考慮すべきことが明らかになり,今後の重要な検討課題として設定できた。分析・考察の順番が逆転する形となったが,想定していなかった知見も得られたため,結果としてはほぼ問題なく進展していると判断してよいだろう。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には,以下の2点に取り組む。 1)前年度設計した質問紙をもとにした郵送調査を実施し,独立型コーディネーターの人的特性について広く情報を収集し,分析する。2)前年度のインタビュー調査結果を踏まえ,少数の対象者を設定し,各対象者の現状を考慮した非構造型のインタビュー調査を行い,コーディネーターの能力形成プロセスを把握する。また,コーディネーターと利害関係者の人的ネットワークについても把握し,コーディネーター個人の影響力がどの程度の人・組織にまで及ぶかを分析する。その際,民俗学などで実践されているエスノグラフィーの視点を活かす。 平成27年度(最終年度)は以下の2点に取り組む予定である。 1)調査対象とした独立型コーディネーターの人的特性と対象者が取り組んだ事業の経済的成果について比較考察し,どのような特性が事業の成功・発展につながるかを抽出する。2)現在実施されているコーディネーター養成研修のプログラムを精査し,研究結果を考慮しながらプログラムの改善方向について提案を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
年度当初は,優れた独立型コーディネーターへの準構造型インタビュー調査をかなりの回数実施することを想定し,旅費を多めに計上していた。しかし対象となりうるコーディネーターが多数参加する研究会への参加,また研究者が所属する食農連携関連の委員会にて,インタビュー対象者に直接会うことができ,その場の時間を調整して出張せずにインタビューを実施できたので,旅費の使用がかなり抑えられた。 また,質問紙の郵送調査については,調査票の設計はできたが,対象者の絞り込み・サンプリングに苦慮し,郵送と回収ができなかった。 物品費については,他の研究資金で購入したものを利用できたので,本課題の予算は使わずに済んだ。 質問紙による郵送調査は本年度実施するので,その郵送ないし回収経費として使用する。 また,本年度より,より定性的調査項目を重視した非構造型インタビュー調査を少数のコーディネーターを対象に実施する。このインタビューは準構造型インタビューよりも長時間を要し,対象者にもある程度負担をかけるため,原則として対象者の居住地や所属機関で行う予定である。そのため昨年度よりも旅費がかさむことが想定され,国内旅費にも充当する予定である。
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