研究課題/領域番号 |
25660178
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研究機関 | 滋賀大学 |
研究代表者 |
田中 勝也 滋賀大学, 環境総合研究センター, 准教授 (20397938)
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研究分担者 |
西澤 栄一郎 法政大学, 経済学部, 教授 (30328900)
藤栄 剛 明治大学, 農学部, 准教授 (40356316)
宗村 広昭 島根大学, 生物資源科学部, 准教授 (90403443)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 保全型農業 / 環境直接支払 / 最適化 / 費用対効果分析 / 遺伝的アルゴリズム |
研究実績の概要 |
滋賀県最大の内湖である西の湖流域(長命寺川流域)を対象に,環境直接支払が水棲生態系に与える影響の最適化・費用対効果分析をおこなった。陸域流出過程は,分布型流出解析モデルであるAIST-SHANELにより,農法変化による栄養塩流出量への影響をモデル化した。環境直接支払の採択プロセスおよび実施費用については,対象地域における農家アンケートを実施しコンジョイント分析により推計した。
両モデルの情報に遺伝的アルゴリズム(genetic algorithm)の最適化手法を組み合わせ,環境直接支払が水棲生態系に及ぼす影響の政策分析をおこなった。その結果,西の湖流域の下流(生態系影響を評価する西の湖近傍の農地)で保全型農業を実施する場合と,上流で実施する場合では,有機体窒素の流達率に違いはみられるものの,政策効果に顕著な違いは確認されなかった。これは,対象地域が比較的小規模な流域であることによるものかもしれず,より大規模な地域における検証が必要である。
また,流域全体を対象とした政策の費用対効果分析の結果によれば,環境直接支払における支払水準の向上は保全型農業の採択面積を有意に拡大し,西の湖に流入する栄養塩を削減する効果が確認できた。ただし,水棲生態系を回復するためには一定規模以上の取り組みが必要であり,実施期間も長期(15~20年以上)に渡ることが必要である。以上のことから,現行の制度はその規模と期間を大きく見直す方向で制度設計を再検討する必要があると考えられる。
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