平成27年度は、ベトナムおよびカンボジアの研究協力者とともに以下の活動を行い、「土づくり」適正技術の知見と課題について考察した。 1、ベトナム中部、トゥアティエン・フエ省バックマー国立公園緩衝地帯において前年度に実施したアンケートおよび参与観察の結果を考察した。炭利用技術を習得した農家のなかで、もみ殻くん炭入りボカシを継続利用している農家は、農産物の販売先の開拓や有機資材の調達について工夫しながら野菜栽培に取り組んでいた。特に、雨除け栽培、畝床でのスプラウト栽培、ホームガーデン内のポット栽培などの栽培技術の工夫がみられた。 2、カンボジア、コンポントム州コンポン・スヴァイ郡の氾濫原において圃場実証試験を行い、作物に対する施肥効果と土壌改良効果を調査した。もみ殻くん炭およびヒマワリヒヨドリ由来のバイオ炭を化肥または堆肥と組み合わせて施用した。栽培した水稲は干害および鼠害により処理区間の比較ができなかった。アブラナ科葉菜のBok Choy およびリョクトウは処理区間の生育に違いがみられ、バイオ炭施用による有効性と土壌改良効果が確認された。 さらに、カンボジア、プルサット州において、もみ殻くん炭を用いてリョクトウを前作し、水稲のポット栽培試験を行った。処理区間の明確な違いは見られなかったが、化肥・堆肥投入を減らす土づくりの方策として、費用節約の効果が認められた。 そのほか、篤農家による家畜糞、緑肥、草木炭など身近な有機資材を利用した稲作・野菜・果樹栽培の実践例がみられた。途上地域での農業普及・技術移転に有効であると考えられた。
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