研究課題/領域番号 |
25660187
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
田村 孝浩 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (20341729)
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研究分担者 |
松井 正実 宇都宮大学, 農学部, 准教授 (10603425)
内川 義行 信州大学, 農学部, 助教 (20324238)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 農作業事故 / 微地形測量 / 作業機械 / 機体挙動 / シミュレーション / 棚田畦畔法面 / 除草機械 / 植生 |
研究概要 |
栃木県,新潟県,長野県,宮城県において農作業事故の事例収集を行い,基盤構造,農業機械の観点から分析を行うとともに,畦畔法面の植生と除草作業に着目して分析を行った。 事例収集の結果,事故6例(うち怪我5例,死亡1例),ヒヤリ・ハット2例,計8件の事例を収集した。このうち7事例は支線農道での事故であった。電子平板測量による微地形解析を行った結果,自主施工の事例については縦横断勾配や幅員などの値が設計基準の範疇を超える傾向にあり,これらが事故要因の1つと考えられた。なお事業施工の事例においては経年変化により路肩が変形し,これが事故原因となっている事例が確認された。 またトラクタ,田植機とコンバインの移動時における転倒事故について,新潟,栃木,長野の事例について,事故時の状況聞き取りと事故原因分析を行った。トラクタや田植機等の4輪車両の走行時における機体挙動の運動方程式を立案し,上記現場測量結果から得られた坂道上を移動するシミュレーションを実施した。その結果,機体との共振により移動速度によって加速度が増減するという結果を得た。 さらに,農作業事故件数が最も多い草刈機事故に対し機械(動力刈払機と自走式モア)の違いと畦畔法面の植生の違いが,除草作業に与える影響を実験し検討した。植生は概ねイネ科草本等による叢生型が優占する中,動力刈払機は偏在するリター等の影響を受け,刈刃の回転数低下等の影響が確認された。一方,自走式モアは植生の影響はほとんど受けなかった。自走式モアでは,動力刈払機で生じる刈草の影響による事故は生じにくいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子平板測量と聞き取り調査に基づいて事故原因の分析を進めた結果,事故原因の多くが作業機械の走行基盤,具体的には路床の縦横断勾配の状況に大きな影響を受けていることが示唆された。トラクタや田植機の運動方程式に現地測量結果から得られた路面勾配を適用することで,事故発生時の機体の上下加速度を得た。このシミュレーション結果は,実際の事故発生状況と一定の関係性が認められ,シミュレーションの有効性が認められた。 また,これまで十分に把握されてこなかった畦畔植生と除草作業機械の関係性について,実験により基礎的知見を得ることが出来た。さらに,次年度に予定する安全な作業環境の創出・改善を検討のための基礎的データも得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
農作業事故に関する事例収集を継続し,各事例の聞き取り調査ならびに電子平板測量を実施する。電子平板測量の結果から3D景観モデルを作成し,事故現場付近の傾斜方向や勾配などの微地形を明らかにする。基盤構造の観点から農作業事故の原因を具体化し,その原因を排除・改善するための整備手法を提案する。 作業機械については,現在,トラクタや田植え機の運動方程式は事故状況に即してピッチング方向の2次元でのシミュレーションとなっており,さらに詳細なシミュレーションとするために3次元化を進める。同時に,既に得られた事故現場の勾配データを適用して,事故時のローリング方向の挙動についても実際との比較検討を進めるとともに,機体バランスを考慮した転倒現象についても判別可能とするよう検討を進める。 また畦畔除草の安全性・効率性を高めるために,自走式モアの使用を前提とした法面形状について研究を展開する。農林水産省の土地改良事業計画設計基準「ほ場整備(水田)」では,傾斜地の除草作業に適した法面形状が示されているが、作業機械は動力刈払機を想定している。自走式モアの普及が進む中、次年度はこれに対する基準の適合性について実験・検討する。また、ほ場整備の既整備地での小段設置状況を調査し、導入を阻害する要因を検討するとともに,未整備地も含め、部分改善的な作業環境改変手法(ハード・ソフト)を模索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
天候不良のため,予定していた現地調査を延期せざるを得なかったため。 延期となった調査は,H26年度中に研究計画のなかに組み込み実施する。
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