昨年度、ブータンの農村計画研究者・実務者2名と同国東部の農村地域を調査し、ブータンの農業及び農村計画の実態調査を行ったのに引き続き、本年度は、彼ら2名を日本に招へいし、鳥取県及び京都府の農業及び農村計画の比較実態調査を行った。これらの調査研究活動を踏まえて、京都大学の農村計画研究者と研究打ち合わせを行うと共に、4月に東京大学で開催された農村計画学会春期大会学術研究発表会に参加し、「ブータンの農業・農村開発」と題するポスター発表を行い、ブータンとわが国の農村計画研究者との討論を行った。これによって、今後、ブータンの農村計画に関心のある日本の若手研究者とブータンの農村計画研究者・実務者との連携の下で共同研究を行う道筋を拓くことができた。 ブータンにおける現地調査及び文献調査を通じて、ブータンにおける農業農村の発展が、同国の憲法第九条第二節にある“The State shall strive to promote those conditions that will enable the pursuit of Gross National Happiness.”に裏打ちされた国家五カ年計画に基づいて進められ、分権化が進んでいる地方(県・郡)レベルでは、農林省が提示した四つの重点目標(①食料・栄養セキュリティの向上、②農村の生活水準の改善、③RNR(Renewable NaturalResources)部門の成長促進とその持続、④自然資源の持続的管理および利用)に対してそれぞれ重点領域と達成指標を提示し、それらに明確な数値目標を設定した上で種々の施策や事業を実施されている。そして、一連の法制度の下で、それらについてのモニタリング及び評価が、国・県・郡のすべてのレベルで行われる、というブータンの農業農村整備の施策について明らかにすることができた。
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