研究課題/領域番号 |
25660197
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
児玉 昭雄 金沢大学, 機械工学系, 教授 (30274690)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 農業工学 / 施設園芸 / 除湿 / 省エネルギー / 二酸化炭素排出削減 / 吸着 |
研究実績の概要 |
本研究は園芸用温室の省エネ除湿技術として,外気との湿度差を駆動源とする吸着式デシカント除湿暖房プロセスを提案し,その適用可能性を検討するものである。このプロセスでは,通気抵抗が小さく,良好な熱・物質移動特性を有する吸着材デシカントロータを用い,「相対湿度が高い温室内の湿潤空気」と「冬季の乾燥外気」の湿度差を吸脱着推進力として温室内を除湿する。除湿と同時に発生する吸着熱は温室暖房に活用する。 前年度に引き続き,処理風量200m3/h程度の小規模実験装置を用いて,除湿暖房性能を調べた。なお,検討対象とする吸着材種にデシカントロータ用に開発されたAlPO系ゼオライトと高相対湿度域で良好な吸着容量を示す活性炭を加えた。空気条件は吸着,再生空気ともに温度23℃とし,相対湿度をそれぞれ90,50%として湿度スイング吸着を行った。吸着空気と再生空気の風量が等しい条件では,物質収支による制約が生じるため,ロータ種類に関係なく除湿量はほぼ同様の値となった。昇温度については吸着熱の大きいゼオライトロータが最大となった。 物質収支による制約を解除し,ロータ自体の除湿挙動を調べるため,再生風量を変化させた。いずれのロータも再生風量の増加に伴い除湿量が増加したが,さらに再生風量を増やしても除湿量の変化は見られず,最適な再生風量が存在する。一方で昇温度は,再生風量の増加に伴って増加する結果となった。 一方,デシカントロータの低コスト化を目的として,粒状吸着材を充填したデシカントロータを提案し,その除湿性能を調べた。圧力損失を低く抑えるために充填吸着材の粒径は小さくできず,従来ロータの3分の2程度の除湿性能であったが,ロータ容器の工夫と吸着材の組み合わせによって,除湿性能が向上する余地は十分にある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
小規模実験装置によって,諸変数の影響評価を進めているが,諸変数の相互関係を見出すには至っていない。その一方で,研究対象とする吸着材種をシリカゲル以外にも拡大し,さらには廉価な粒状吸着材の利用も検討した。数値計算についても,シリカゲルロータ用に構築,運用を開始しており,結果が得られつつある。数値計算の他の吸着材種への拡大については粒子内拡散抵抗等の検討が別途必要である。
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今後の研究の推進方策 |
小規模実験装置を用いた性能試験と構築済みの数値シミュレーションにより,ロータ回転数,吸着再生風量比,吸着再生面積比,吸着再生空気条件の影響と相互関係を明らかにし,温室用除湿暖房向けデシカントロータの設計操作指針を確立する。あわせてプロセス構成の検討を進める。除湿後空気の温度上昇度によっては,そのまま温室内に循環させるのではなく乾燥外気の加温に用いれば,より低い湿度の空気を温室内に供給することができる。熱交換操作のために装置が若干複雑となり暖房効果も薄れるが,二酸化炭素の供給という新たなメリットが生まれる。この点で,湿度スイング吸着操作における二酸化炭素の吸脱着現象の把握を検討項目に加える。
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