本研究は園芸用温室の省エネ除湿技術として,外気との湿度差を駆動源とする吸着式デシカント除湿暖房プロセスを提案し,その適用可能性を検討するものである。このプロセスでは,通気抵抗が小さく,良好な熱・物質移動特性を有する吸着材デシカントロータを用い,「相対湿度が高い温室内の湿潤空気」と「冬季の乾燥外気」の湿度差を吸脱着推進力として温室内を除湿する。除湿と同時に発生する吸着熱は温室暖房に活用することを目論む。 前年度に引き続き,小規模実験装置を用いた除湿暖房試験を実施した。本年度は,高相対湿度域で極めて大きな水蒸気吸着量を示すシリカゲル系デシカントロータ2種類を新たに評価対象に加えた。実験対象は,シリカゲル系ロータ3種類(MA,MH,SSCR-U)とAlPO系ゼオライトロータ1種類の合計4つである。ロータの直径,厚さはそれぞれ300mm,200mmである。実験では吸着側空気相対湿度を90%,再生側空気相対湿度を50%に固定することで湿度スイング幅一定にして除湿暖房実験を行った。なお,空気流速は,物質収支によって除湿能力が制限されることを回避するため,吸着側面風速1m/s,再生側面風速3m/sとし,ロータ回転数を変化させながら水蒸気吸脱着挙動・温度上昇度を調べた。 デシカントロータを用いた除湿暖房には,①大きい有効吸着量②小さい熱容量③大きな吸着熱がデシカントロータの特性として求められる。一方,除湿暖房性能を低下させる要因としてロータの全熱交換挙動がある。また,ロータ回転数の増加に伴い顕熱交換効果が大きくなるため除湿暖房には低回転域での運転が好ましい。さらに再生空気温度が低下するとロータの全熱交換挙動がより顕著となり昇温幅は減少するが,ロータ出口空気の回転方向分布測定結果から吸着区間の分割が除湿暖房効果の維持に有効であることがわかった。
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