研究課題/領域番号 |
25660198
|
研究種目 |
挑戦的萌芽研究
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
清水 浩 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (50206207)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 施設園芸・植物工場 / 超音波 / 受粉システム |
研究概要 |
本年度は超音波アレイの検討,複数個の振動子の制御方法の検討,変調方法の検討をおこなった。以下それぞれの項目について研究実績の概要を述べる。 1.超音波アレイの検討:一つの超音波振動子の出力は小さく花を振動させるほどのパワーはないので,これらを複数個組み合わせて使用する(アレイ)。 アレイから約30cm数の位置で十mN程度の出力を得るために必要な振動子の個数を超音波周波数および音圧レベルを用いてシミュレーションし,超音波アレイのサイズ(振動子の個数および形状)を求めた。 2.複数個の振動子の制御方法の検討:超音波が平面波として入射するときに,入射された物体表面に生じる音響放射圧は音響インテンシティの関数となっている。音響インテンシティはベクトル量であり,音の大きさ,周波数という情報以外に,方向性に関する情報も有している。また,矩形の振動子アレイでは焦点に生じる超音波の音圧分布はほぼsinc関数になることが理論的に判明しており,アレイの形状,音響インテンシティ,超音波波長などから焦点を結ぶ位置が理論的に計算可能である.これを実現するための各振動子の制御方法を検討した。 3.変調方法の検討:特定の位置に超音波の焦点を結ぶことが可能となるが,これだけではただ花をある一定の力で押すという操作をするに過ぎない。トマトとイチゴの花の固有振動数はすでに計測済みでほぼ30~40Hzであることが明らかとなっており,超音波(たとえば40kHz)を搬送波として30~40Hzの変調をかけて花に放射することで,花を共振させることができることを確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
285個の超音波素子を実装した試作機を製作した。また,この試作機を駆動するためのソフトウェアも4種類作成し,285個の超音波素子から放射される超音波を一つの焦点に集め,焦点位置で任意の周波数で変調をかけることができ,放射強度も256段階で調整可能なプログラムをベースとして,焦点を3次元空間にライン状に連続して繰り返しスキャンできるプログラムや,100mm×100mmの空間をランダムに焦点を合わせて放射するもの(もちろんこのプログラムについても放射強度や変調周波数は任意に変更できる),さらにこの100mm×100mmを1ブロックとして,これを上下方向に3つ作成するプログラムを作成した。これらのプログラムを用いて,イチゴを対象として接触振動型授粉装置(ぶんぶん太助,TS-550,タキイ種苗)との比較試験を行った。その結果,受粉前のつぼみと開花数においては対照区と超音波区の差は観察されず,両グループアkンの供試品種の差はないと考えられる。受粉後,受粉方法による着果数と収穫数(商品化率)の差が観察された。着果数は対象区のほうが多かったが,商品化率は超音波区のほうが89%と接触型(39%)よりも高い値を示した。これらの結果より超音波受粉によるイチゴの受粉は可能であることが判明した。
|
今後の研究の推進方策 |
学内のトマトおよびイチゴを栽培している温室内にハチなどによる受粉ができない実験区画を設置する。その区画内で,開発した超音波放射装置を作業台車に設置して,一日に2回程度超音波を放射し花を共振させる(超音波区)。温室内で受粉状態を確認することは難しいので,花の数と収穫できた果実の数を調査し,着果率で評価を行なう。 また対照区として従来通りのマルハナバチによる受粉区を設定し同様に着果率を計測する。超音波区および対象区の着果率を比較し超音波放射装置の性能を総合的に評価する。
|