研究概要 |
同一の溶存酸素濃度(DO)、pH、温度、暗黒条件で20時間浸漬した結果、バブルを含まない水に対してナノバブル含有水の場合に、発芽率が顕著に向上した。ナノバブルのゼータ電位は、これまでの知見から-20~-40mVである(Ushikubo et al., 2010)。発芽率向上の理由の一つには、ナノバブルの特性であるゼータ電位が考えられる。一方、ゼータ電位はpHによって変化することが知られている(Najafi et al., 2007 )。そこで、微量のHCLまたはNaOHによりpHを調整した水にナノバブルを発生させ、pHが異なる種々のナノバブル含有水を調製した。これを用いてオオムギ種子の発芽試験を行い、pHおよびDOを同じ値に調整し、25℃でコントロール(バブルを含まない水)とナノバブル水(ナノバブルを含有する水)に種子を浸漬した場合の発芽率を比較検討した。用いた種子は2011年産のオオムギである。その結果、コントロールとナノバブル水における発芽率は、それぞれ、pH4, DO 8.1mg/Lでは85%および95%、pH4.9-5.0, DOナ 7.7 mg/Lでは65%および 80%、pH6.1-6.5, DO 8.0-8.1 mg/Lでは65%および79%、pH7.1-7.3, DO 7.9-8.0 mg/Lでは72%および85%、pH8.0-8.1, DO7.8-7.9mg/Lでは55%および70%、pH9.0-9.1, DO 7.9-8.0では4。9%および71%であった。 以上により、溶存酸素濃度が同一の条件ではいずれのpHでもナノバブルによる発芽率促進効果が認められた。また、その効果はpHが高いほど顕著であった。 さらに、オオムギ種子内の水のプロトン緩和時間T2が、ナノバブル含有水に浸漬した種子 において長いことが示され、種子内の水の流動性が高いことが推察された。
|