研究課題/領域番号 |
25660206
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田中 史彦 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30284912)
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研究分担者 |
濱中 大介 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (60399095)
内野 敏剛 九州大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (70134393)
田川 彰男 千葉大学, 園芸学研究科, 教授 (90216804)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | シミュレーション工学 / 青果物 / 3次元構造 / 熱拡散 / ガス拡散 |
研究概要 |
青果物の微細構造をX線CTと共焦点レーザ顕微鏡等によって観察し、マルチスライス画像を取得すること、2次元スライス画像から3次元立体形状を再構築し、青果物内で起きる熱・物質拡散(生化学反応を含む)や力学的変形などの諸現象をコンピュータによって解析することを目的とする。本年度はおもに共焦点レーザ顕微鏡とX線CTによる青果物のマルチスライス画像の取得とコンピュータ画像処理による3次元立体構造の再構築について研究を遂行した。まず、X線CTと共焦点レーザ顕微鏡等による青果物細胞組織の観察とスライス画像の取得では、カキとナシのマルチスライス画像を現有のX線CT装置(Latheta LCT-100、アカロ)によってスライス幅2mmで取得し、3次元可視化解析ソフト(Amira5、マックスネット)を用いて組織の粗密を解析し、CT値に基づく密度分布を決定した。カキについては計測されたCT値に閾値を設け、果肉(粗密)、タネ、ヘタを抽出し3次元内部構造を明らかにした。また、貯蔵過程で粗密分布が変化することも明らかにした。さらに、CT画像を基に3次元形状をコンピュータ上に再構築し、熱移動解析を行うことで各部位における熱拡散係数を決定した。果肉、タネおよびヘタの熱拡散係数は、それぞれ1.46×10-7、2.05×10-7、2.11×10-7m2s-1となった。同様に、共焦点レーザ顕微鏡によってダイコンのマルチスライス画像を取得し、3次元可視化解析ソフトによって細胞壁および空隙を抽出し、3次元形状を再構築した。この手法により細胞の体積や形状の計測が可能となり、今後はこれらのパラメータと品質との関係を明らかにする必要がある。現在、これを用いたガス拡散モデルを構築中であり、細胞内外でのガス交換を視覚化することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究計画では、(1)X線CTと共焦点レーザ顕微鏡等による青果物細胞組織の観察とスライス画像の取得、(2)マルチスライス画像からの3次元立体形状の再構築、および(3)細胞組織レベルでの熱・物質移動と力学解析のうち、おもに(1)と(2)について研究を遂行することとした。両装置を用いたマルチスライス画像の取得が可能となっており、特に、共焦点レーザ顕微鏡による画像の取得では鮮明な画像を得るための染色法や調光操作を習得し、3次元立体形状再構築に必要な多くのデータを蓄積できた。X線CTでは、青果物内部の粗密を測定することによって不均質材料の3次元形状の再構築を可能としている。また、貯蔵中の青果物の果肉組織の粗密分布変化を計測・定量する手法も確立しており、研究はおおむね順調に進展している。X線CT画像に基づくモデルの構築では、各部位輪郭のスムージング処理によって計算が安定する健全なメッシュの作成にも成功しており、課題(3)のうち熱移動解析は可能となっており、熱移動に関する物性値の決定も可能としており、研究は計画通りに遂行されているものと判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に引き続き、3課題について研究を遂行するが、(2)の3次元立体形状の再構築と(3)のモデルシミュレーションが主体となる。 まず、(1)X線CTと共焦点レーザ顕微鏡等による青果物細胞組織の観察とスライス画像の取得(担当:濱中)では、前年度のデータ取得の不足分を補う。また、青果物の品目を追加することも検討する。つぎに、(2)マルチスライス画像からの3次元立体形状の再構築(内野)では、前年度に引き続き同様の研究を遂行する。最後に、(3)細胞組織レベルでの熱・物質移動と力学解析(田中)では、前年度までで開発したプログラムに生化学反応、相変化モデルを組み込み、青果物の呼吸反応と凍結膨張に関する研究を推進する。呼吸反応のモデル化では、Michaelis-Menten式を呼吸速度式として使用し、種々の環境下における青果物内部ガス濃度を予測し、内部成分の変化について検討したい。凍結のモデル化では、凍結による体積膨張を凍結率の関数として表現し、凍結速度と細胞破壊の関係をシミュレーションにより明らかにする。水分の膜透過についても検討する。 共同研究者の田川が退職のため分担者から除外されるが、シミュレーションプログラムの開発は順調に進んでおり、研究代表者の田中が継続して研究を遂行できる現状にあり、問題はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
3次元解析ソフトのオプションモジュール購入予算として、次年度使用額約20万円を繰り越した。平成25年度は解析ソフトのオプション機能を使用する必要はなかったが、諸物理現象の連成解析を行う際には、追加のオプションモジュールが必要となる。このため、平成26年度予算として繰り越すこととした。 繰越額分はオプションモジュールの追加費として使用する予定である。
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