研究実績の概要 |
非浸潤性着床・胎盤形成モデルとしてウシの着床・胎盤形成に注目し研究した。また、浸潤性着床・胎盤形成モデルとしてラットのトロホブラスト細胞とその分化に注目し、研究を進めた。とくに、後者は米国カンザス州立大学医学部のマイク・ソアレス博士との共同研究で進めた。実際、ラット胚トロホブラスト細胞株(Rcho細胞)にshRNAにより転写因子Cited2の遺伝子発現を85%以上制限したところ、従来の巨核細胞への分化ではなく、スポンジオ・トロホブラスト細胞へと分化した。この時、次世代シーケンサーを用い遺伝子発現を網羅的に解析したところ、リアルタイムPCRと一致するデータを獲得した(Imakawa et al., Reproduction 2016)。さらに通常、他の細胞・組織では比較的発現が抑えられている機能遺伝子群の発現と内在性レトロウイルス遺伝子群の強い発現が見られたことと他の研究から、トロホブラスト細胞ではエピジェネテック制御が(それほど)かかっていない低メチル化状態であることが伺えた。このような状況でありながら、胚トロホブラスト細胞は子宮内膜に着床し、胎盤形成へと進んでいき、妊娠が確実なものになる。そこで、遺伝子発現調節および発現制御を検証するためにリンパ球ホーミングに関与する遺伝子群(Bai et al., Biol Reprod 2015)、癌の転移(上皮間葉系転換)にみられる遺伝子群、さらに内在レトロウイルス遺伝子群(Imakawa et al., Genes to Cells 2015)の発現制御に焦点を当て研究を進めた(Imakawa et al., Reprod Med Biol 2015)。しかしながら、これら一連の遺伝子発現を時間・空間特異的に制御する高次な遺伝子発現制御法までは検証できなかった。
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