研究課題/領域番号 |
25660213
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
吉村 幸則 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (10167017)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ニワトリ / 消化管 / プロバイオティクス / 抗菌ペプチド / 炎症性サイトカイン |
研究実績の概要 |
本研究はニワトリ消化管の感染防御機能を向上させるために,消化管に抗菌ペプチドのトリβディフェンシン(AvBD)を発現する機能が存在することを実証し,この機能がプロバイオティクス(乳酸菌)の給与により強化される可能性とその機構を追究することを目的としている。前年度は,①消化管粘膜において微生物成分を認識するToll様受容体とAvBD発現を誘導すること,ヒナへのプロバイオティクス給与はAvBD遺伝子発現には影響しなかったが、腺胃粘膜のAvBD蛋白密度を減少させるので、これを分泌させる作用があることを示唆した。本年度はプロバイオティクスがグラム陰性菌成分のリポ多糖(LPS)を認識して、その下流でAvBDや炎症性サイトカインの発現を誘導する機能に影響する可能性を検証した。その結果、ヒナへプロバイオティクス給与(P区)または非給与(対照区)し、LPSを経口摂取させると、腺胃のAvBD6と12発現、盲腸のAvBD1,2,4,5,6,7発現はP区で対照区より高いこと、炎症性サイトカインのIL1B発現は両区で差はなかったが、IL6は腺胃で、IFNγは盲腸で対照区に比べてP区で低かった。このことからプロバイオティクスは腺胃と盲腸においてAvBD発現を誘導するLPSへの応答性を高めるものと考えられた。一方、炎症を誘導するサイトカインの発現はプロバイオティクスにより腺胃と盲腸で抑制される可能性が示唆されたが、この作用は両部位で異なる可能性がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
主要な目標であるプロバイオティクスが消化管AvBD産生をもたらすLPSに対する応答性の検証は達成しているが、これに関連して遺伝子発現だけでなく免疫染色でもAvBD蛋白の局在変化を検証するという点では、腺胃では成果を得たが、腸管では検出できていないという課題を残している。この理由として現在までに作製している抗体の感度や特異性に問題があるか、または組織中に蛋白が少ないかが考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
AvBD抗体の精製を高度に行って特異性を強化するなどにより、AvBD免疫染色性を改善する。さらに抗菌ペプチドとしてAvBDだけでなく、カセデリシディンについても消化管での発現を解析する。AvBDとカセデリシディン発現への影響を検証する微生物抗原として、サルモネラ菌LPSとグラム陽性菌成分を用いるように計画していたが、鶏肉の食中毒問題を引き起こす原因菌としてカンピロバクターによる事故が多いので、これを勘案して今後にグラム陽性菌ではなく、カンピロバクターLPSが抗菌ペプチド発現に及ぼす影響を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
抗菌ペプチドである「カセデリシディン」に対する抗体を作製し、これの消化管における遺伝子発現だけでなく、タンパク質の局在特性も解析する予定である。正確な抗体作製に時間をかけても必要な情報を確実に入手し、そして抗体作製費とこれを用いる実験に必要な経費を次年度予算と合わせて支出することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
3種類のニワトリのカセデリシディンに対する抗体を作製する費用として約40万円を見込んでおり、次年度の経費と合わせてこれらの抗体を用いたカセデリシディン蛋白局在を解析する実験を実施する。
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