研究実績の概要 |
本研究はニワトリ消化管の感染防御機能を向上させるために、消化管で抗菌ペプチドが産生され、この機能がプロバイオティクス給与により強化される可能性とその機構を追究することを目的としている。前年度までに腺胃と盲腸で微生物分子パターンを認識するToll様受容体(TLR)と8分子種のトリβディフェンシン(AvBD1, 2, 4, 5, 6, 7, 10, 12))が発現すること、プロバイオティクスを給与したうえで、サルモネラ菌リポ多糖(sLPS)を感作させると一部のAvBDの発現性が高まること、一方で炎症性サイトカイン発現への影響は小さいことを示した。平成27年度はカンピロバクターLPS(cLPS)も同様のAvBD発現への影響を示すか、また他の有力な抗菌ペプチドであるカテリシディン(CATH)の発現もプロバイオティクスの影響を受けるかを追究した。その結果、cLPSを感作させると、盲腸において、プロバイオティクス給与区と対照区との間でAvBD発現に影響しないか、または一部のAvBD発現はプロバイオティクス区で低かった。次に、腺胃と盲腸において4分子種のCATH(CATH1-4)が発現すること、サルモネラ菌LPSを感作させると、盲腸でCATH1と2の発現が対照区よりプロバイオティクス区で高くなった。しかし、cLPS感作ではCATH発現にプロバイオティクス区と対照区との間で差は見られなかった。消化管細胞の抗菌ペプチド産生能を制御する機構に、エピジェネティクスが関わる可能性を検討するためにヒストンアセチル化を同定し、今後にこれを発展させてプロバイオティクスの影響を解析できる可能性も示唆した。これらの結果から、プロバイオティクス給与はsLPSにより誘導されるAvBDとCATH発現を増強させて感染防御機能を高めること、しかしこのLPS作用はsLPSとcLPSとで異なる可能性が示唆された。
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