研究課題
挑戦的萌芽研究
着床・受胎率を改善し生殖効率を向上させるには、着床関連因子の人為的な操作が必須である。そのためには、着床期特異的な因子の制御機構とその機能を理解する必要がある。本申請研究では、着床関連因子の一つであるインディアンヘッジホッグ(Ihh)に着目し、申請者が開発した生体外子宮内膜モデル(スフェロイド)を用いてIhhの制御機構と機能を明らかにすることを目的としている。ウシIhhの遺伝配列から特異的なプライマーを作製し、RT-PCRによって子宮における発現を検索した。その結果、発情周期および着床期において発現が確認された。リアルタイムqPCRによって遺伝子の定量解析を行った結果、発情期に比べて発情中期および着床期において有意に高い値を示した。ウエスタンブロッティングによるタンパク解析においても同様の結果を示した。加えて、免疫染色化学的検索によってその局在を解析した結果、子宮内膜の腔上皮および腺上皮で特異的に発現している事が明らかとなった。ついで、培養ウシ子宮内膜間質細胞および上皮細胞におけるIhhの遺伝子発現をRT-PCRによって解析した。その結果、Ihh遺伝子は子宮内膜上皮細胞のみで発現が認められた。しかしながら、ステロイドホルモンであるE2およびP4の効果は認められなかった。以上の結果から、ウシ子宮内膜においてIHHが発現し、その局在は上皮細胞である事が明らかとなった。また、発情期に比べて発情中期および着床期で発現が高くなる事も示された。培養細胞では子宮内膜上皮細胞でIhh遺伝子の発現が認めらたが、その発現はステロイドホルモンに影響されない事が示された。
2: おおむね順調に進展している
平成25年度は基礎的データとしてウシ子宮組織および培養細胞におけるIhhの発現を明らかにするとともに、下半期にはステロイドホルモンの影響に関する解析を始める計画であった。RT-PCR、リアルタイムqPCRおよび免疫染色化学的検索によってウシ子宮組織におけるIhhの発現を解析し、その発現動態および局在を明らかにした。また、RT-PCRによってウシ子宮内膜細胞におけるIhhの発現を解析し、上皮細胞で発現している事を示した。しかし、ステロイドホルモンによる影響は認められなかった。これらの結果から、ほぼ研究計画通りに今年度の目的を達成していると考える。
平成25年度はほぼ計画通りに研究を推進する事が出来た。ウシ子宮におけるIhh遺伝子の発現は発情中期および着床期において高い値を示した。発情中期および着床期は卵巣の黄体機能が高いため血中P4濃度が高い時期である。よって、Ihhの発現をP4が制御している可能性が示唆される。一方で、培養上皮細胞を用いた解析ではIhhの発現に対するP4の影響は認められなかった。この事は想定内の結果であり、P4は上皮細胞に対して直接的に作用するのではなく、間質細胞を介して間接的に作用するものと考えられる。平成26年度はP4の作用によって間質細胞で産生されると予想される仲介因子、およびE2およびLIFの影響を明らかにしIhhの発現制御機構を解明する。
端数として計算する。来年度の物品日の一部として使用する。
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Birth Defects Res B Dev Reprod Toxicol
巻: 98 ページ: 164-169
Reproductive Toxicology
巻: 35 ページ: 17-24