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2013 年度 実施状況報告書

小児インフルエンザ脳症のマウスモデルの作出

研究課題

研究課題/領域番号 25660221
研究種目

挑戦的萌芽研究

研究機関鳥取大学

研究代表者

寸田 祐嗣  鳥取大学, 農学部, 准教授 (20451403)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2015-03-31
キーワードインフルエンザ / 脳症 / マウス / サイトカイン / 脳脊髄液 / ウイルス / 病理
研究概要

小児インフルエンザ脳症は、季節性インフルエンザウイルス感染に続発するヒトの重篤な神経疾患であり、主に乳幼児に発生する。その病理発生機序は不明であり、有効な治療法も確立されていない。全てのインフルエンザウイルス感染者が脳症を発症するわけではないため、インフルエンザ脳症の発生には生ウイルスの呼吸器感染の他にも要因があると予想されている。インフルエンザ脳症を発症した患者の血液や脳脊髄液(CSF)中にはTNF-αやIL-6といった炎症性サイトカインが多量に検出されるため、多量のサイトカインが血液中およびCSF中に誘導されることが本疾病の発症に関わっていると推測されるが、その起源については不明である。
本研究では、呼吸器感染したインフルエンザウイルスの一部が中枢神経系に迷入することにより脳内で異常なサイトカイン産生を引き起こすという仮説を立て、これを検証するためにBALB/cマウスにA型インフルエンザウイルスH3N2(A/Aichi/2/68)を鼻腔内接種後、ウイルス接種後13日目のマウス脳内に不活化ウイルス抗原を少量投与する実験を行った。抗原投与マウスでは非投与マウスに比較して、脳内でのIL-6遺伝子およびIL-10遺伝子の有意な発現上昇が認められた。一方、TNF-αおよびIL-1βの脳および血中での発現量に差は認められなかった。病理組織学的観察により、抗原投与群マウスの脳室周囲には軽度の浮腫が認められたが、インフルエンザ脳症に特徴的な神経症状や脳血管周囲浮腫はいずれのマウスにも認められなかった。以上の成績は、本実験条件下では、小児インフルエンザ脳症に一部類似した病態を作出することができたが、完全な再現には至らなかったを示している。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究の当初の目的であった少量のインフルエンザウイルスの脳内への侵入が脳内において異常なサイトカイン産生を引き起こすのではないか、という可能性をマウスを使った動物実験により検証することについては、一部達成できたが、完全な再現には至らず、実験条件や方法についてさらに検討が必要である。また、研究開始当初には想定していなかった事象として、研究代表者は平成25年10月に研究機関を移った(北海道大学から鳥取大学へ異動)したため、研究室の移動や環境整備のために、時間を要した。異動先において研究実施に必要な環境は整っているため、今後、実験目的と計画に沿って研究を進める予定である。以上より、現在までの研究達成度は、「やや遅れている」と自己評価したが、今後おおむね順調に進むと予想される。

今後の研究の推進方策

新たに感染実験を行い、生ウイルスをマウスの外鼻孔へ接種後、不活化ウイルスを脳内投与するタイミングについて条件検討を行う。その後、これまでと同様に病理組織学的解析および血中、脳内サイトカインの定量を行う。また嗅神経を介した鼻腔から脳内へのウイルスの取り込みの有無についてリアルタイムRT-PCR法を用いて高感度に検出する。より適切な脳症モデルの作出に至った場合、そのマウスの脳血管透過性に関与するタイトジャンクション構成因子の発現変動を調べ、病理発生を明らかにし、予防・治療効果を評価する実験へ展開する。もし、適当なモデル作出に至らなかった場合には、サイトカインの由来についての視点を転回して、経腸的にグラム陰性菌あるいはLPSを投与する実験に移行して、インフルエンザウイルスの呼吸器感染と消化管障害を介した脳症誘発の可能性について検証する。

次年度の研究費の使用計画

助成金の次年度使用分が発生した理由として、物品費の経費節約に努めたこと、研究者代表者の異動に伴う手続きや研究室移動に時間を要したため、進捗がやや遅れたことが挙げられる。
繰り越した予算については、26年度分として請求した助成金とあわせて、主にマウスの購入や採取材料の解析に必要となる消耗品(一般試薬、酵素、抗体など)に充てる。金額は妥当であり、費目についての大幅な変更予定もない。

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公開日: 2015-05-28  

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