研究課題/領域番号 |
25660222
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石井 秋宏 北海道大学, 人獣共通感染症リサーチセンター, 助教 (90421982)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | アレナウイルス / ザンビア / 人獣共通感染症 / xenotropism |
研究概要 |
平成25年度中にザンビア共和国ソルウェジにて採集した齧歯類動物89頭について、アレナウイルスをスクリーニングした。腎臓RNAに対してRT-PCRを行った結果、マストミス (Mastomys natalensis) 1検体(13ZR31)、Grammomys属ネズミ (Grammomys sp. ) 2検体(13ZR68, 13ZR88)の計3検体がアレナウイルス陽性であった。得られたウイルス遺伝子断片の塩基配列の解析結果から、13ZR31株はこれまでの研究で発見したザンビアのマストミス由来アレナウイルスであるLunaウイルスの一種、13ZR68、13ZR88株は新種であることが推測された。Lunaウイルスの分離法と同様に、腎臓の乳剤をVeroE6細胞に接種してウイルス分離を試み、13ZR68、13ZR88株の分離に成功した。13ZR31株はVeroE6細胞で増殖が確認できなかったため、本研究代表者が樹立したMastomys natalensisの近縁種であるMastomys couchaの腎臓由来細胞株(MKF3T)に、臓器乳剤を接種した結果、分離に成功した。 アフリカ大陸西部にみられる出血熱性病原体であるアレナウイルス属のラッサウイルスはMastomys natalensisを宿主とするが、近年の研究では他の齧歯類動物から宿主を移動したアレナウイルスであると推測されている。アフリカ東部のマストミス由来アレナウイルスであるLunaウイルス、Mopeiaウイルス等によるヒト感染症の報告はなく、ウイルスと宿主動物の変化、それに伴う遺伝的背景の変化と病原性の関係については、より詳細な調査が必要である。本研究により、これまでに分離されたLunaウイルスとはcell tropismの異なるLunaウイルス株(13ZR31株)が分離され、また、non-mastomysアレナウイルスの新種(13ZR68, 13ZR88株)が分離できたことから、ウイルスの宿主特異性や、それに関係する遺伝的背景の研究を進展させることが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、アフリカ ザンビア国の齧歯類動物が保有するアレナウイルスを用いて、ウイルスのxenotropismおよび、それに関連した遺伝的背景を探索することを目的としている。この目的を達成するため平成25年度には、ザンビアにおけるアレナウイルスのサーベイランスおよび、分離されたウイルスの各種動物への感染性の解析を計画した。 平成25年度のサーベイランスでザンビアのマストミスから検出、分離されたアレナウイルス13ZR31株は、遺伝的相同性からLunaウイルス株の一種と考えられたが、VeroE6細胞で増殖が見られない点で、これまでに分離されたLunaウイルス株とは異なるcell tropismを持つことが示唆された。また、Grammomys属ネズミから分離されたアレナウイルス13ZR68,13ZR88株は、宿主動物種および遺伝的系統関係から新種であると考えられた。これらの成果は、本研究の目的であるウイルスのxenotropismと遺伝的背景の探索を行うためのツールとして非常に有用であり、培養細胞および動物に接種することで得られる表現系を解析することで、最終目的の達成に寄与することが期待できるものであり、本年度の計画は概ね順調に達成されたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は研究計画に従い、アレナウイルスのxenotropismと遺伝的背景の関係の解明を目指す。最初に、これまでに分離したウイルスの基本的な正常を明らかとするため、様々な動物種由来の培養細胞での増殖を測定し、cell tropismの解析を行う。さらに、マウスに投与して病原性を検討する。次に、xenotropismの解析として、ヘビ封入体病病原体アレナウイルスとの関連性を検討するため、ヘビ個体を用いた感染実験を計画しているが、使用個体数を減らすためヘビ細胞株の樹立を試みる。ここで樹立した細胞株で感染、増殖が確認できたウイルスについて、個体への感染実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究が順調に進展し、消耗品の使用額が予定よりも減少したため。 研究をより発展させるため、試薬等の消耗品費として使用を計画している。
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