西アフリカに存在する病原性アレナウイルスであるラッサウイルスは、近年、Lysosomal associated membrane protein-1 (LAMP-1)が必須の細胞侵入受容体であり、各種動物細胞へのトロピズムを規定していることが示唆されている。ザンビアマストミス由来アレナウイルスのLunaウイルスはVeroE6細胞でよく増殖するが、本研究課題で発見されたLunaウイルスSLW株はVeroE6細胞で増殖せず、自然宿主動物であるマストミス由来細胞株(MKF3)でのみ増殖が確認されていた。そこで、Lunaウイルス及び、他のザンビア齧歯類動物由来アレナウイルSolweziウイルス及びLunkウイルスについて、LAMP-1に着目してアレナウイルスの細胞侵入機構を解析した。HEK293細胞のLAMP-1遺伝子を、CRISPR/Cas9を用いて編集し、LAMP-1欠損HEK293細胞株を作成した。また、HEK293細胞(ヒト)、MKF3細胞(マストミス)、Solweziウイルスの自然宿主であるGrammomys属ネズミ組織試料からLAMP-1 mRNAをクローニングし、タンパク質発現プラスミドを作成した。作成したLAMP-1欠損HEK293細胞株に各動物由来のLAMP-1を発現させ、アレナウイルスの感染能を検討した結果、Lunaウイルスについてはマストミス及びGrammomysの齧歯類動物由来LAMP-1が侵入受容体となるが、ヒトLAMP-1は機能しないこと、Solweziウイルス、とLunkウイルスはLAMP-1を受容体としないことが明らかとなった。LunkウイルスのVeroE6細胞への感染は、LAMP-1非依存的な経路を介していることが示唆され、特にLunaウイルスSLW株はこの経路による感染性が低いため、LAMP-1を受容体として利用できるMKF細胞でのみ増殖できることが明らかとなった。本結果は、アフリカ大陸に存在するアレナウイルス科ウイルスの細胞侵入機構、ひいてはトロピズムの解明に非常に重要な知見であり、現在論文を投稿している。
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