平滑筋の収縮はミオシンのリン酸化制御による。RhoA/Rho kinase系とCPI-17系によるPP1 PPase活性調節が、このミオシンのリン酸化を制御し、様々な疾患の要因となっている。本研究では、蛋白質の発見以来30年近く経過した現在でも今だ遺伝子ノックアウトマウスの作出に成功していないCPI-17に着目し、その遺伝子改変動物を作出し、in vivoでの解析を行うことでCPI-17の生理学的、病態生理学的役割の一端を解明しようという萌芽的研究である。 初年度はCRISPR/Cas9ゲノム編集システム技術により、世界で初めてCPI-17KOマウスの作出に成功した。しかし漸くSPF化を終えて繁殖が軌道に乗り、各種生理機能解析に着手する段階まで到達したところで研究期間が終了した。現在、テレメトリーシステムによる全身血圧測定などについての解析に着手した。また、CPI-17はThr38のリン酸化によりホスファターゼ活性阻害作用を示すことから、Thr38をGlutamic acidに置換したConstitutive active CPI-17(以下CA[T38E]CPI-17)と、Thr38をAlanineに置換したDominant negative CPI-17(以下DN[T38A]CPI-17)についてもKnock-inマウスの作出を目指し、最終的に両Knock-inマウスの作出に成功した。両系統についても、現在SPF化の段階にある。 以上、2年度は、機能解析まで至らなかったものの、世界で初めてCPI-17の全欠損マウスとCA[T38E]CPI-17とDN[T38A]CPI-17のKnock-inマウスの作出に成功し、今後、CPI-17の生理学的、病態生理学的機能を解明する重要なツールを得た。
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