研究課題
本研究の目的は、狂犬病ウイルス因子を神経特異的に調節発現するトランスジェニック(Tg)マウスを樹立・利用し、狂犬病の治療標的となるウイルス因子を同定することである。具体的には、特定ウイルス因子の発現誘導によりマウスが狂犬病類似の症状を示すか否かを検討する(実験1)。さらに、特定の遺伝子が欠損したウイルスを、当該ウイルス蛋白質を発現するTgマウスに脳内接種することでマウスを発症させた後、同蛋白質の発現の停止によってマウスが回復するかどうかを検証する(実験2)。H27年度は、前年度に引き続き、ウイルスL蛋白質発現Tgマウスを作出するために必要なプラスミドの構築を行なった。目的遺伝子をマウスES細胞に組換えるためには、3種類のプラスミドを試験管内でひとつのプラスミドに融合する必要がある。融合前の各プラスミドの機能性が正常であることを確認した後に、融合反応を行なった結果、ES細胞導入用のプラスミドの機能性が著しく低下することが確認された。このような技術的な問題により、L蛋白質を発現するTgマウスの作出については断念した。次に、G蛋白質を発現するTgマウスを作出するために必要なプラスミドの構築を行なった。その結果、機能的な融合プラスミドを得ることに成功した。さらに、実験2のin vitroモデルを確立するため、G蛋白質を調節発現するマウス神経芽腫由来NA細胞を樹立した。G遺伝子欠損ウイルスを、G蛋白質を発現する同細胞に接種した2日後に、その発現を停止した結果、ウイルスの増殖は、停止しない場合に比べて約10000倍低下した。したがって、G蛋白質の供給停止によりG遺伝子欠損ウイルスの増殖が著しく抑制されることが確認された。現在、G蛋白質を発現するTgマウスの作出を行なっており、まもなく完成する予定である。
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生体の科学
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