研究課題
昨年度までの研究で、野生生物のERを介した反応をスクリーニングする方法が構築できた。一方、バイカルアザラシ(Pusa sibirica)はポリ塩化ビフェニル(PCBs)などの残留性有機汚染物質(POPs)を高蓄積している。これらPCBsは本種の肝臓で、シトクロムP450(CYP)によって水酸化代謝物であるOH-PCBsへと代謝される。そこで今年度は、バイカルアザラシERアイソフォーム(bsERα・ERβ)を介したOH-PCBsの転写活性化能の分子機序について解析することを目的とした。16種のOH-PCBsによるER アゴニスト転写活性化能を測定したところ、多くのOH-PCBsが活性を示し、異性体によって誘導倍率が大きく異なっていた。一方、一部の OH-PCBs は E2 と共処理時に相加・相乗作用を示した。そこでER転写活性化能に対するOH-PCBsの構造的特徴について理解するために、OH基置換位置の異なる3種のOH-CB30異性体の用量-応答関係を評価した。その結果、OH基置換位置がpara位 > meta位 > ortho位の順でEC50値が低く、高活性を示す傾向がみられた。次に、これらの物質におけるERリガンド結合ポケット内の結合状態を、in silicoシミュレーションで解析した。その結果、4’OH-CB30はE2と同様に、para位のOH基がE353と水素結合し、相互作用エネルギーは低値を示した。 一方で3’OH-CB30は、4’OH-CB30とは異なり、L346と水素結合を形成していたが、2’OH-CB30は近傍のアミノ酸残基と相互作用していなかった。これらのことから、OH基の置換位置の違いがERリガンドポケット内での相互作用に寄与し、転写活性化能に影響することが示唆された。本研究の結果、多くのOH-PCBsは ERs に対しアゴニスト活性をもち、OH基や塩素の数・置換位置で異なる転写活性化能を有することが明らかとなった。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (6件) (うち国際共著 4件、 査読あり 6件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (21件) (うち国際学会 16件、 招待講演 1件) 備考 (2件)
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