研究課題/領域番号 |
25660240
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
日笠 喜朗 鳥取大学, 農学部, 教授 (30165071)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 肺高血圧症 / 僧帽弁閉鎖不全症 / 血管リモデリング / PDGF受容体 / イマチニブ / 犬 |
研究概要 |
本研究では犬の慢性心不全による肺高血圧症に対する血管リモデリングに関与する血小板由来成長因子(PDGF)受容体の阻害活性を有する分子標的薬の有効性とその治療法を確立することを目的としている。この目的に対して、本年度では犬の慢性心不全による肺高血圧症および僧帽弁閉鎖不全症に対するPDGF受容体阻害作用を有するイマチニブの治療効果を検討した。慢性フィラリア症または僧帽弁閉鎖不全症により肺高血圧症を呈し、一般的治療を実施中の慢性心不全犬に対して低用量のイマチニブ (既報告の抗腫瘍薬としての用量の約1/3量) を追加投与することにより、その有効性を検討したところ、イマチニブ投与により、臨床症状スコア、心拍数、左心房径/大動脈径比、三尖弁最高逆流速、収縮期肺動脈圧、右室と左室のTei index、左室拡張早期流入速波形 (E波) と僧帽弁輪運動速度Emの比 および心房性ナトリウム利尿ペプチド濃度は有意な低下を示し、拡張期血圧、左室内径短縮率、左室駆出率、1回拍出量および心拍出量は治療後に有意に増加し、心不全の改善が認められた。従って、低用量イマチニブ投与は肺高血圧症を示す慢性心不全犬の治療として有効であることが明らかになった。一方、肺高血圧を示さない無症候性の僧帽弁閉鎖不全犬に対するイマチニブ投与は、血圧、心拍数、心拍出量、僧帽弁逆流速およびその他の心機能パラメータには有意な変化を示さなかったことから、イマチニブは僧帽弁閉鎖不全、それ自体には明らかな影響を及ぼさないと考えられた。現在、肺高血圧ラットモデルを用いて、イマチニブを含む数種類の分子標的薬のPDGF受容体発現と肺血管リモデリングの抑制効果、右室肥大と生存率の改善効果を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管リモデリングに関与する血小板由来成長因子(PDGF)受容体阻害薬の1つであるイマチニブは、犬の肺高血圧症に対して治療薬として有効であること、およびイマチニブは僧帽弁閉鎖不全、それ自体には明らかな影響を及ぼさないことを明らかにしたことは、当初の計画どおりであり、順調に薬物の有効性評価を遂行している。ただし、肺高血圧ラットモデルを用いた数種類の分子標的薬の肺血管リモデリングの抑制効果の検討は少し遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、肺高血圧症ラットモデルを用いた血小板由来成長因子(PDGF)受容体活性の阻害作用を有する数種類の分子標的薬について、PDGF受容体発現と肺血管リモデリングの抑制効果、右室肥大および生存率の解析と有効薬物のスクリーニングを進めていく。同時に、犬の各種慢性心不全による肺高血圧症に対する選択分子標的薬の有効性と治療法の検討を進展させ、肺高血圧症に対する新規治療法の有用性を明らかにしていく予定である。
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