研究課題
本研究の目的は、尿中に排泄されるエクソソームに含まれるタンパク質から、腎疾患と関連する腎小胞体ストレスが生じた時のバイオマーカーを見出して、新規の腎疾患の早期細胞診断方法を開発しようとするものである。これまでの2年間の研究で、in vivoの腎小胞体ストレス発生モデルを用いて、腎の機能性タンパク質であるAQP1に、バイオマーカー候補分子としての可能性を見出して来た。またこの分子は、小胞体ストレス発生時に、腎におけるタンパク質の発現量が減少して、その変化がエクソソーム中のAQP1存在量に反映していることも分かった。平成27年度には、以上の実績を踏まえて、in vitroの系を用いて、小胞体ストレス発生時のAQP1発現量が減少するメカニズムについて検討した。その結果、タンパク質発現量が減少するメカニズムとして、mRNA発現量の減少が考えられた。また、転写阻害剤を用いた実験から、この遺伝子発現量の減少は、mRNAの分解に基づく可能性が示唆された。AQP1は腎細胞での水輸送を担っており、またこの輸送機能が細胞遊走に関与することが知られている。そこで、水透過性と細胞遊走能について調べたところ、小胞体ストレス発生時には、水透過性および細胞遊走能が有意に抑制され、タンパク質発現量の減少は、細胞機能にも反映することが分かった。本年度の研究結果から、小胞体ストレス発生時の腎細胞において、AQP1 mRNA発現量が減少して、AQP1タンパク質発現量が減少すること、また、このメカニズムが、in vivoで観察されたエクソソーム中のAQP1存在量の減少に関連する可能性が考えられた。3年間の総括としては、腎における小胞体ストレス発生を検出するバイオマーカーとして尿中エクソソームAQP1が有用であることを世界で初めて発見し、当初の目的を達成したものと考えられる。
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Nephrol. Dial. Transplant.
巻: in press ページ: in press
doi: 10.1093/ndt/gfw03
血管医学
巻: 16 ページ: 149-157