研究課題
【最終年度に実施した研究の成果】ウマの滑液(SF)由来間葉系幹細胞(MSCs)について,骨髄(BM)や脂肪(AT)由来幹細胞と比較して増殖速度がゆっくりしていること,継代を繰り返す(細胞老化)ことによって軟骨分化誘導時に見られるゼラチンシート形成能が低下することを確認し,H25年度の実績に加えて,学会発表と国際誌への論文発表を行った。骨軟骨欠損を作成した実験用ブタへのMSCsの関節内投与試験では,病理学的検索を完了し,MSCsを移植した関節において欠損部への滑膜誘導が促されて軟骨基質が再生することが確認された。最終目標である自然発生性の関節疾患症例への適用を進めるために,幹細胞移植の安全性をウマにおいても確認する必要があった。健康なウマを用いて,正常関節に他家の幹細胞を注射・移植した後の副反応を確認したところ,投与後3日目の病理解剖において軟骨変性や滑膜炎等の合併症の発現は認められなかった。研究期間を終了したが,平成27年6月,他機関との共同研究によって臨床応用を念頭においた実験用ウマ(サラブレッド)2頭を使った移植試験を継続して行う運びとなった。【研究期間全体を通じて実施した研究の成果】ウマ関節由来のSF-MSCsの起源と多分化能を検討し,損傷軟骨の再生のための新たな治療法を提案した。関節内骨折及び離断性骨軟骨炎のある関節のSF中には,正常関節と比較して豊富なMSCsが含まれており,それらは多分化能を有し,特に軟骨分化では特殊染色で強染されるゼラチン様シートを形成することを認めた。SF-MSCsの特徴は滑膜(SM)由来のMSCと一致しており,実験用ブタによるSM-MSCsの骨軟骨損傷関節内への自家移植では,損傷部への滑膜誘導と軟骨再生が組織学的に確認された。臨床応用に向けて,ウマ由来のSM-MSCを他家移植(関節注射)し,副反応を認めないことや安全性を確認できた。
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
The Veterinary Journal
巻: 202 ページ: 53-61
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1090023314003219
http://www.vet.kagoshima-u.ac.jp/kadai/V-surg/surg/index.php?%E7%A0%94%E7%A9%B6%E7%B4%B9%E4%BB%8B