研究概要 |
犬の顆粒細胞腫腫瘍細胞の黒色腫細胞への形質転換機構を解明するため、研究計画調書に従って平成25年度に以下の研究成果を得た。すなわち、株化した顆粒細胞腫瘍細胞の培養経過(第8, 13, 16代目)、第13代目の腫瘍細胞をヌードマウスに移植し形成させた腫瘤(2, 3, 4週後)ならびに対照として発生部位(口腔、爪床、眼)の異なる3種の悪性黒色腫株化細胞について、マーカー蛋白の発現とともにDNAマイクロアレイを用いて遺伝子動態を解析した。培養経過では形態的な変化は認められなかったが、原発腫瘍には発現していなかった神経幹細部のマーカー淡白が検出され、顆粒細胞腫瘍細胞は脱分化を起こすことが明らかとなった。また有意に発現が増加する遺伝子群では細胞増殖のシグナル伝達系、腫瘍化に関連する遺伝子が、有意に減少する遺伝子群では酸化的リン酸化に関連する遺伝子が上げられた。株化細胞を移植して得られた腫瘤では、神経幹細部のマーカー淡白に加え、4週目の腫瘤では黒色腫のマーカー淡白であるメランAの発現が見られ、顆粒細胞腫瘍細胞は黒色腫細胞に形質転換を起こしていることが再確認された。また有意に発現が増加する遺伝子群では細胞増殖のシグナル伝達系、腫瘍化、酸化的リン酸化、細胞間接着に関する遺伝子が上げられたが、有意に減少する遺伝子群は認められなかった。一方、発生部位の異なる悪性黒色腫株化細胞では口腔ならびに爪床と眼由来細胞とでは遺伝子プロファイルが著しく異なっていた。すなわち、有意な高発現を示す遺伝子群には細胞増殖のシグナル伝達系、酸化的リン酸化、腫瘍化、細胞間接着に関連する遺伝子が、有意な低発現を示す遺伝子群には細胞増殖のシグナル伝達系、メラニン形成、黒色腫腫瘍化に関連する遺伝子が上げられ、眼に発生する悪性黒色腫腫瘍細胞はその腫瘍化に関連する遺伝子が口腔や爪床の腫瘍細胞とは異なることが明らかになった。
|