研究課題
挑戦的萌芽研究
マウスの胎齢9日には前腸、中腸および後腸の1本の連続した管が形成され、その後、腸管の屈曲・迂曲が起こる。現代の発生学は形態形成を遺伝子発現で理解できる時代で、動物種および個体間で部分的に共通する腸管の屈曲・迂曲にも遺伝子発現制御が関与すると考えられる。その解明は動物種を超えた腸管形態(ウマの重複 結腸、ウシの円盤結腸など)、消化生理および消化管病理の理解に役立つ。今年度は、マウス胎子期における十二指腸空腸曲(DJF)形成過程の観察及び形成関連遺伝子候補の検索を行った。生後および胎子期のC57BL/6マウスを用いた。生後個体では消化管の走行に個体差が大きかった。しかし、DJFは全個体で共通する屈曲部位として観察されたことから、胎子期ではDJFを屈曲伸長の解析に最も有効な部位とした。胎子期DJFはその形成過程から順に膨化期、屈曲形成期、屈曲伸長期に分類された。膨化期では、腸管径が増加し屈曲は認められなかったが、腸管壁の左右領域は背腹領域よりも活発に細胞増殖を示した。屈曲形成期では、DJFは腸管前後軸に沿って90°半時計回りに回転していた。屈曲外側の腸壁は内側よりも細胞増殖が活発だった。屈曲伸長期のDJFは胃の後方を包囲していた。観察期間を通じて、背側腸間膜の屈曲形成への関与は認められなかった。遺伝子解析では、レチノイド経路及びヘッジホッグ経路関連遺伝子が屈曲軸に沿った発現勾配を示し、両発現はDJF形成部位に検出された。以上の観察から、DJFが腸管屈曲を研究するための有効な部位であることが示された。
2: おおむね順調に進展している
DJFの形成過程には、膨化期、屈曲形成期、屈曲伸長期を経ることが明らかになり、その分子メカニズムにレチノイド経路及びヘッジホッグ経路の関与が示唆された。屈曲形成には、従来考えられてきた腸間膜の作用は少なくとも最小限であることが推測され、今回の結果は新しい屈曲のストーリーを展開する基盤を示すものと評価した。
レチノイド経路ならびにヘッジホッグ経路の関与をさらに示すため、in situハイブリダイゼーション法ならびにリアルタイムPCR法を駆使する。さらに胎子のホール培養法を応用する。
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すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件) 学会発表 (5件)
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