平成26年度は、屈曲形成時における壁構成細胞の超微形態的構造を観察した。さらに、上皮、平滑筋、間葉系細胞、および神経の各種マーカーを用いた免疫染色を施し、屈曲形成との関連を計量組織的に検討した。 超微形態的観察では、とくに間様系細胞における接着複合体の数ならびに平均長を中心に計測をおこなった。その結果、屈曲内側では外側に比較して、細胞が縦に配列し、接着複合体の数は少ないが、平均長は長いことがわかった。また、細胞間隙が外側で有為に広くなっていた。E-cadherinは、重層立方状の上皮の細胞間に、網状の陽性反応を示した。膨化期、屈曲形成期を通じて、屈曲内外側上皮の陽性反応の差は認められなかった。αSMAは輪筋層に陽性を示していたが、縦筋層は陰性であった。屈曲内外側で陽性度合い、陽性細胞数に著変は認められなかった。Vimentinは間葉系細胞に広く陽性を示すことが知られているが、平滑筋層を挟んで浅層ならびに深層に網状の陽性が認められたが、屈曲内外側では大きな違いは観察されなかった。Tuj1は平滑筋層の外層にほぼ1列に陽性反応が観察されたため、いわゆる筋層間神経叢の部位に反応が認められることがわかった。同部位にはSox10ならびにp75も陽性を示した。驚くことに、Sox10ならびにp75は、屈曲内外側で陽性細胞数に違いは認められなかったが、Tuj1は屈曲内側で多く、外側で少なかった。 Sox10ならびにp75は神経堤細胞のマーカーあるのに対し、Tuj1はより分化した神経細胞のマーカーである。このことから、腸管の屈曲形成に神経の分化が深く関連することが明らかとなった。 さらに、これらマウスの所見が、他動物種にも当てはまるか否かを検討するため、ブタ胎子結腸ならびにウシ新生子第三胃について検討を進めていたが、平成26年度中には明確な結果が得られなかった。
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