研究課題
昨年に引き続き、focal adhesion kinase(FAK)に焦点を当てて解析した。マウス卵子・卵丘複合体(COC)におけるFAKの発現と卵成熟におけるFAKのTyr397部位における リン酸化の役割を解析した。卵成熟においてFAKのTyr397部位における リン酸化を抑制し、その後の受精・初期発生を観察した。Try397部位のリン酸化FAKは卵子と卵丘で発現することをウエスタンブロティイングで明らかにした。免疫組織化学では卵子と卵丘の細胞質に陽性反応が観察された。Try397部位のリン酸化FAKは相互の接着部位に蓄積した。Try397部位のリン酸化FAKの発現の程度はin vivoでは卵丘膨化前に比べ低下した。FAKインヒビター(Tyr397のリン酸化を特異的に阻害)の添加はFSH無添加培地における卵成熟及び卵丘膨化を促進した。ヒアルロン酸合成酵素2(Has2)のmRNAの発現(卵丘膨化の指標)が誘導されるのがRTPCRにより明らかになった。FAKインヒビターの処理は胚盤胞への発生率を上昇させた。FAKは卵成熟においてTyr397のリン酸化を通したヒアルロン酸合成酵素Has2の発現調節によりCOCの成熟、特に発生能力の獲得に関与していることを明らかにした。卵子の成熟について、卵成熟メカニズムの上流因子の解析を進め、プロリン異性化酵素Pin1が卵子成熟(減数分裂再開始)、初期胚及び卵子形成過程において重要な役割を果たしていることを明らかにした。ウシ胚の品質向上を目指して、抗酸化化学物質2種(アスタキサンチン、メラトニン)を添加した成熟培地でホルスタイン種および黒毛和種の卵子を体外培養し、メラトニンがホルスタイン種の胚盤胞発生率および黒毛和種胚の耐凍性に効果があることを明らかにした。
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