研究課題
妊娠中の乳腺では、出産後の授乳に備え、「乳腺小葉の形成」や「母乳の産生」といった構造や機能の大きな変化が認められる。最近、我々は正常妊娠マウスに比べ、ストレス(高血圧)妊娠マウスでは、出産前日の妊娠19日目において、乳腺小葉の形成・母乳産生が亢進すること、すなわち、乳腺の発達が促進されることを見出した(未発表)。そこで本研究は、① 乳腺の発達に対するストレスの影響を明らかにし、② 乳腺作用物質の同定と機能の検証を行うことを目的とした。これまでに、妊娠高血圧マウスにおける乳腺発達促進は、昇圧ホルモンとして知られる、アンジオテンシンII とその受容体 (AT1) シグナルの、高血圧非依存的な作用により制御されていることを明らかにしている。平成26年度はアンジオテンシンII による乳腺発達促進の作用点を明らかにするため、妊娠中の乳腺における乳腺発達制御因子の解析を行った。妊娠中の乳腺発達は STAT5, ELF5, GATA3 といった転写因子群の働きが重要であることが、ノックアウトマウスを用いた解析より明らかにされている。STAT5 はリン酸化によって活性化されるが、我々は、妊娠 16 日目の妊娠高血圧マウス乳腺においてSTAT5 のリン酸化が亢進していることを明らかにした。GATA3 の遺伝子発現は正常妊娠マウスと差が認められなかったものの、妊娠 16 日目の妊娠高血圧マウス乳腺において、ELF5 の遺伝子発現が亢進していることが判明した。これはアンジオテンシンII-AT1 シグナルが、STAT5 の活性化と ELF5 の発現上昇を介して、乳腺発達を促進している可能性を示唆している。
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J. Recept. Signal Transduct. Res.
巻: 34 ページ: 401-409
10.3109/10799893.2014.908917.