研究課題
本研究では、次世代シーケンサー解析から得られた一本鎖の非コードRNA(ncRNA)について、ゲノム配列特異的エピジェネティクス変換に係る機能性を解析し、これを基礎としてmRNAを利用した人為操作胚の質的向上に向けて、マウス受精卵等を用いて検討している。昨年度までに明らかにした初期胚型プロモーターncRNA(pancRNA)のうち、ノックダウンにより胚性致死となるIl17d遺伝子のpancRNAの機能解析を深化した。pancIl17dノックダウン胚のRNA-seq解析から、細胞死関連遺伝子に加え、栄養芽層分化と多能性細胞分化関連遺伝子発現にも異常をきたしていることが示された。さらに、内部細胞塊の培養およびES細胞におけるノックダウン実験から、pancIl17dは細胞増殖を促進することが分かった。以上から、pancIl17dはIl17d遺伝子を活性化することで、初期発生における細胞生存・細胞増殖・細胞運命決定に重要な役割を果たしていることが明らかとなった。本成果に関する論文は、Development誌に採択された。さらに、人為操作胚において、pancRNAの標的となりうるDNAメチル化異常をゲノムワイドに明らかにするため、マウス雌性発生胚を活用したPost-Bisulfite Adapter-Tagging (PBAT)法によるDNAメチローム解析を行った。母方由来ゲノムにおいて、受動的脱メチル化領域以外にも、受精から二細胞期までに能動的脱メチル化あるいは新規メチル化が起こりうる39,000領域の同定に成功した。これらの可変領域には反復配列であるLTRのMERVKファミリー属する配列が多く含まれていた。ブタのpancRNAについても生体におけるpancRNAの同定を終了し、人為操作胚のエピゲノム正常化に向けて情報が整備された。
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