研究課題/領域番号 |
25660251
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
米澤 智洋 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10433715)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | GnRH / 性フェロモン / メタスチン / キスペプチン / 獣医学 / 生理学 / 中枢 |
研究実績の概要 |
発情した雌から分泌される雌性性フェロモンは、雄の繁殖行動を誘発するなど、動物の生殖に重要な役割を果たしている。発表者らはこれまでに、ゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)を産生しない突然変異マウスであるhypogonadal (hpg) マウスを用いた実験により、GnRH刺激を受けた雌マウスは雄マウスに追尾される回数が増えることを見出した。本研究では、この現象が性フェロモンを介した繁殖行動であるかを検討した。hpg雌マウスにエストロジェン含有シリコンチューブを1週間留置した後、GnRHアゴニストである酢酸フェリチレリン(GnRHa)または溶媒のみを側脳室に投与した。投与から30分後に正常雄マウスのケージに移し、行動を記録、解析した。GnRHa投与群は、雄マウスに追尾される回数、マウント回数、ロードシス商のいずれも、対照投与群に比べて高かった。一方、同様の処置を行ったhpg雌マウスを鋤鼻骨を切除した雄マウスのケージに移したときには、追尾行動の変化は認められなかった。次に、同様の処置を行ったhpg雌マウスから尿を採取し、GC-MS分析を行ったところ、GnRHa投与群の尿中には対照群では認められないピークが複数個存在した。このうちの1化合物を野生型の去勢雌マウスの外陰部に塗布し、正常雄マウスのケージに移して行動観察を行ったところ、化合物を塗布した雌マウスに対する雄マウスの追尾行動は、対照群に比べて僅かであるが有意に増加した。以上の結果から、GnRH刺激された雌マウスは雄の繁殖行動を誘発すること、この現象は鋤鼻器を介して伝達されることが明らかになった。さらに、雌マウスの尿中にGnRHによって放出が刺激される化合物が存在し、それが雄の追尾行動を増加させることが示唆された。(本年度日本繁殖生物学会にて発表)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りの進行である。異動に伴うhpgマウスの搬入も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度では、これまでの実験に用いた動物の上記部位から分泌物を採取し、GC-MSによる解析を行う。GC-MSは応募者の研究機関もしくは連携研究者の北里大学に設置されているQP2010(島津)を用いる。得られたピークのうち、GnRH刺激時に特異的に観察されるピークを選び、そのマススペクトルをWileyライブラリに照会して候補物質を同定する。これを購入もしくは合成し、実際に雄に嗅がせ、行動を確認する。 さらに、GnRHアゴニストを脳室内投与した30分後の尿内に特異的に観察されるピークについて解析しする。
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