研究課題/領域番号 |
25660255
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研究種目 |
挑戦的萌芽研究
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
久保田 浩司 北里大学, 獣医学部, 教授 (80263094)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 精原幹細胞 / 初期化 / 人工幹細胞 |
研究概要 |
マウス線維芽細胞から直接人工精原幹細胞を誘導するために、線維芽細胞の初期化条件を検討した。テトラサイクリン応答性転写因子(rtTA-M2)を恒常的には発現するトランスジェニックマウスの雄胎子より線維芽細胞を調整し、テトラサイクリン誘導プロモーター制御下にある山中因子(Oct3/4、Sox2、Klf4、c-Myc)発現プラスミドを電気穿孔法にて導入後、ES細胞ならびに精原幹細胞の培養に用いられるSNL76/7フィーダー細胞とウサギ精原幹細胞の培養に用いられるC166フィーダー細胞上に播種した。培養液はES細胞培地と精原幹細胞培地を用いた。線維芽細胞の初期化の評価は多能性幹細胞の指標であるアルカリフォスファターゼ(AP)陽性コロニー数を計数することにより行った。テトラサイクリン誘導体であるDoxの7日間添加により山中因子を誘導発現させると、いずれの培養条件でもAPを強く発現する細胞の出現を認めた。AP陽性コロニー数はいずれの培養条件下でもほぼ同程度であった。この時点で初期化されたiPS細胞を選択するため、8日目以降Doxを除去して培養を続けたところ、いずれのフィーダー細胞を用いた場合でもES細胞培地でのみ、AP強陽性のiPS細胞の継続的増殖を認めた。精原幹細胞培養条件下では、初期化の過程でAP陽性細胞集塊が分散する特徴的なコロニー形成を観察したが、Doxを除去すると精原幹細胞培養条件下でもES細胞培養条件下でもAP陽性細胞の持続的な増殖は見られなかった。このことから、精原幹細胞培養条件下では初期化が不完全であることが示唆され、胎子線維芽細胞の初期化にはES細胞培養条件が必要であることが明らかとなった。さらにES細胞条件下で初期化された細胞の一部において精原幹細胞特異的タンパク質が発現していることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
テトラサイクリン誘導発現系を用いてrtTA-M2トランスジェニックマウスの線維芽細胞の初期化条件を確立することができたことは本研究の技術基盤の確立として重要である。しかし、初期化した胎子線維芽細胞から精原幹細胞培養条件下で増殖する細胞の誘導には至っていない点で当初の予定よりは少し遅れている。 ただし今回、初期化した細胞において一部精原幹細胞マーカーを発現する細胞が存在することを見出したことは、今後の人工精原幹細胞への誘導条件の検討に大きく貢献すると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
ES細胞培養条件下で初期化された細胞において、精原幹細胞マーカーを発現している細胞が確認されたことは、今回確立した胎子線維芽細胞の初期化条件において、精原幹細胞化へのプログラムが偶発的に進んでいる可能性を示唆している。人工精原幹細胞を直接誘導するために、この偶発的に精原幹細胞マーカーを発現する細胞の増加を指標に、更なる初期化条件ならびに初期化後の培養条件を検討する。精原幹細胞マーカー陽性細胞の性状解析を行うとともに、精原幹細胞培養条件下において増殖する細胞の誘導条件の検討を引き続き行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
雇用した研究支援者の人件費の支出が見込みより少なかったことが原因である。 人件費もしくは物品費等に使用する。当該年度に雇用した研究支援者はプロジェクトの遂行の上でやや困難を伴ったため、次年度はより慎重に選考したい。技術的に適任の研究支援者を雇用できない場合には、研究の進展に支障をきたさないように実験の効率化を図るための物品費、もしくはその他(委託料等)に充てる。
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