本研究計画では、細胞の直接リプログラミング法の最適化を目的として研究を進めた。計画内で幾つかの変更点がある。線維芽細胞を用いた直接リプログラミング法の効率が低かったため、転写因子誘導ES細胞株を利用して分化傾向の検討を行った。プライミング遺伝子としてHnf4、方向性決定遺伝子としてFoxa1を強制発現させたところ、Hnf4aがより強く肝細胞マーカーを発現することがわかった。このことから、プライミング遺伝子の発現が方向性決定遺伝子の発現に先立つことが分化移行の短縮化に役立つのではないかと予想された。Hnf4遺伝子とFoxa1遺伝子を同細胞内で別々に強制発現させるための仕組みとして、Tamoxifen誘導によるERT-fusion遺伝子の作製を試みた。一方で、mRNAをtransfectionする方法も検討したが、Piggybacによってintegrateされた遺伝子との発現強度およびカイネティクスの違いが大きく、同じ条件下での比較が難しいことから、いずれかの方法に統一して検討する必要が応じた。そのため、mRNAカクテルのtransfectionによる細胞分化誘導を試みるため、各種mRNA分子の生成を行った。これらの条件検討は、遺伝子強制発現による細胞分化誘導法のツールとしてそれぞれの特性を活かした干渉ツールとなりうるため、今後の細胞分化誘導法開発のために有意義であるといえる。
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